このサイトを長年読んでいただいている方ならご存じだと思うが、私はいわゆるところの「J-POP」などの日本の音楽をほとんど聴く機会がない。日本の音楽、さらには女性ヴォーカルとなると、その 99.9% に全く興味がない。これは別に私が洋楽原理主義者だとか、女なんかにロックが分かるわけねえぜ!、とかいう偏狭な考えの持ち主というわけではなく、ただ単に趣味や好みの問題である。誰に言い訳してるんだか。
そんな私がこのバンド(というかソロ・プロジェクトか)を初めて見たのは、つい最近、NHK の某音楽番組であった。黒髪長髪をバンダナで束ね、サイケな柄のシャツにラッパズボン(死語)。今時ヒッピーみたいな格好して、なんなんだこのねえちゃんは。
ところが歌声を聞いて驚いた。正直、ブッ飛んだ。シャウトの熱量、声の太さ、圧倒的な声量。まんまジャニス・ジョプリンじゃねえか。曲も格好いい。ドライブしまくるギターのリフとカッティングが腰に来る。Rolling Stones をバックにジャニスが歌っているような、そんな気になってくる。うおお。やっぱりなんなんだ、このバンド。早速ネットでバンド名を検索してみると、ちょうどデビュー・アルバムが発売されたばかりらしい。すかさず iTunes Store で速攻で購入。
アルバムを聴いてみると、一曲目の「Hi-Five」もガッツィなロック曲で、こちらも跳ねまくるリズムが強力。アルバム冒頭の「つかみ」としては完璧である。そして二曲目が私がテレビで見た「マニフェスト」。ジョン・ポール・ジョーンズを思わせるイントロの歪んだベースラインから、シャープなギターカッティングのリフが続く。そして歌だ。正に火の出るようなシャウトが鼓膜に突き刺さる。改めて何度も聞き直してみても、やっぱり凄い。「愛を込め
て花束を」でなんだか急に普通の J-POP ぽっくなったと思ったら、中間でブルーノートスケールをビシビシと使ったシャウトパートが出て来て、思わず和む。この曲、なにやらドラマの主題歌みたいと感じたが、実際本当に使われたらしいですね。
と、耳に残ったこれら以外には、湘南フォークロック調の曲や、ビートルズ系バックビートものなど、なかなか多彩かつバラエティに富んだアルバムとなっている。しかし多彩ということは逆に言えば的が絞り切れていないということでもあり、全体としては若干散漫な印象であることは否めない。どうもこのアルバム、今まで発表したシングルをとりあえずまとめたものプラスアルファという形だそう。出来の悪いベストアルバムを聞いた時に感じるようなちぐはぐさは、それが原因だったか。
ともあれ、この歌声は強烈である。日本人女性でここまで歌える人を、私は寡聞にして知らない。このデビュー・アルバムも相当売れているようだが、願わくば今後、電通・博報堂的クソつまんないタイアップ系バラードとかに変に寄り道せずに、是非とも「ブルーズこそがマニフェスト」という歌詞の通り、ブルーズ道を驀進していってほしいものである。