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アメリカ産重鎮シニカル・スラッシュ・メタル・バンド MEGADETH の最新作。
バンド解散から一転、復活作となった前作「THE SYSTEM HAS FAILED」が、ほぼデイヴ・ムステイン大佐のソロ作同然という形で作られたのに対し、約 2 年半ぶりとなる今作はバンドとしての体制を整えて制作された。前作では若干ツメが甘いながらも、ファンの誰もが望む MEGADETH が MEGADETH たらしめるために必要としていたシニシズムを(一応は)取り戻したアルバムであったが、今作ではそのシニシズムがより強固な音像として表現することに成功している。その結果、往年の緊迫感も復活。これぞ MEGADETH 以外の何者でもない、唯一無二のアルバムに仕上がったという印象。
ということで、とりあえずはほっとしたというか、MEGADETH がデビューした当時から追いかけているオールドファンにしてみたら、「よくやってくれた」と快哉したいところである。オープニングナンバー #1 からして 80 年代の体臭が色濃く匂うザクザクしたリフに、複雑でひねくれた展開が炸裂、そこにムステイン大佐があの「スネ夫声」でシニカルな歌詞を毒づけば、これぞ MEGADETH という案配。若干ムーディーな中盤がやや中ダレしている感もあるが、そこを過ぎればまたもや後半の #10 や #11 で再び MEGADETH 節が炸裂する。あたりのアグレッシヴな展開なぞは、なさすがの出来映えと唸るしかない。
しかしどこかに微妙な寂寥感を感じているのも事実である。確かにあの大量のキャベツの千切りを作るが如くなザクザクとしたギター・リフや、一筋縄ではいかない複雑で突拍子もない曲展開は、かつてのキレが戻ってきたという感じではある。悪くない。しかしこれで良いのか、これで満足かと問われると、ううむ、と唸って即答できない。
スピードもアグレッシヴな展開も、ザクザクと複雑なリフも、シニカルで怒りと皮肉が満載の歌詞も、かつての MEGADETH が備えていたものはあらかた揃っている。しかしあの触れたもの全て袈裟切りにしてしまうような、多くの人の血を吸った日本刀のような切れ味と妖しさ、尖った破壊衝動的なサウンドまでには、残念ながらもうあと一歩及ばないのであった。これを退化ととるか、はたまた円熟の極みととるか。いやほんと、もうあとちょっとなんだけどねえ。
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