■ Cassini Reveals Titan's Xanadu Region to Be an Earth-Like Land
NASA とヨーロッパ宇宙機関(ESA)の土星探査機カッシーニが撮影した、衛星タイタンの「ザナドゥー(Xanadu:桃源郷の意)」と呼ばれる領域の画像が公開された。
1994 年、ハッブル宇宙望遠鏡がタイタンの地表に異常に明るい領域を見つけ、桃源郷を意味する「ザナドゥー」という名前がつけられた。それから 10 年後に探査機カッシーニが直接土星とタイタンを訪れ、子機のホイヘンスが見事タイタンの地表に着陸。まるで地球の川や海のような地形や窒素とメタンに満ちたレンガ色の地表の様子など、様々なデータや画像を地球に送り届け、驚きと興奮をもたらしてくれた。その後カッシーニは順調に土星軌道上を周回し、土星や有名なリングの様子、衛星の詳細な画像データなどを次々と送り続けている。そして今年の 4 月 30 日に、カッシーニがレーダでタイタンの詳細な地形を撮影し、ようやくザナドゥーの本当の姿が見えてきた。
NASA のサイトに公開されたザナドゥーの画像を見ると、まるで地球のどこかの景色を撮影したのではないかと錯覚を覚える。大小さまざまな山脈があちこちにあり、隕石の衝突か氷火山の噴火でできたと思われるクレーターも見られる。また山々の間を縦横に川が走り、ザナドゥーを囲む「海」へと注いでいる様子は圧巻。良くできた動画も公開されているので、こちらも必見。
しかしタイタンの実際の様子とは、はたしてどんな世界なのか。もちろんタイタンのような冷たい星に液体の水は存在しないから、この「川」に流れているのはおそらくメタンだとのこと。となるとメタンの雨やメタンの泉がザナドゥー近辺では見られるのかもしれない。タイタンの地表付近の温度は -180℃ と極低温の世界だからメタンが液体として存在するわけだ。いやほんと、行けるものなら自分で行って、この目で見てみたいものである。
ところでタイタンと聞いて思い浮かぶのは、やはりホーガンの「造物主(ライフメーカー)の掟」だろう。タイタンで発見された、タロイドと呼ばれる機械生命体。もともと彼らは、百万年前に異星人が送り込んだ自動工場宇宙船で作られた作業用ロボットだった。それが故障のために独自の進化を遂げ、今では地球の中世ヨーロッパを彷彿とさせる生活を営むまでになっていた、という奇想天外なストーリー。機械生命体の誕生から、やがて知性と個性を獲得し自意識が芽生える過程は圧巻だし、人類と機械生命達とのファーストコンタクトシーンなど、正に SF ならではのセンスオブワンダーに溢れる名作だ。
そんななかでも印象に残っているのが、タロイドの暮らすタイタンの荒涼とした様子である。メタンの風と窒素酸化物の埃。時にメタンの雨が降り、嵐もやって来る。極寒の過酷な環境に耐え、質素な生活を送るタロイドたち。もしかしたら本当にタイタンにはこんな世界が広がっているのではないか。そんな気分になったものだ。
今のところ残念ながらタロイドは発見されていないようだが、それでもタイタンには「何かがいる」と思わせる神秘に満ちている。