「この俗物が!」 勢古浩爾:洋泉社
「バカの壁」が大ベストセラーになって以来、すっかり「バカ本」ブームの昨今だが、そのブームを作った先駆けの一つがこの著者の「まれに見るバカ」だった。その著者の次のターゲットは俗物。
で、俗物とは何か。著者は本書の前書きで「バカ」と「俗物」の違いについてこう述べている。「バカは『自分』に憑く。つまり神聖不可侵の『自分』に固着(執着)する。かたや俗物は『世間』に憑く。もっといえば『世間価値』に憑く。バカは存在の一様式であり、俗物は関係の一様式である。バカは箸にも棒にもかからない。かたや俗物は、とりあえず箸にも棒にもひっかかりはするのだ」と定義している。わかるような、わからんような気がするが、「バカ」と「俗物」は似ているようで決定的に違うらしい。
本書で指摘されている俗物の具体例も、なかなか楽しい。地位、権力、金、女、知識、モノ、学歴などなど、誰もが少しは持っている「俗物性」をバサバサと切っていく。内容的には「まれに見るバカ」とそう違いはないのだが、様々な俗物根性に対する鋭い指摘は読んで楽しいし、論理展開の強引さとどこかサバサバした潔さは笑える。
しかし考えてみると、この世は俗物だらけ、もうなんでもかんでも俗物ではないのか。もっともこの世の中、俗物でいられない方が難しいかもしれない。そういう意味では、日本はやはり平和で、そしてとことん呑気な国である。