2006 年 WRC の最終戦となる第 16 戦ラリー・グレートブリテンは 12 月 3 日(日)に最終のレグ 3 が行われ、フォード・フォーカス RS WRC06 のマーカス・グロンホルムが優勝。これでグロンホルムは今季 7 勝目をマークした。
舞台となったウェールズの季節は冬。一日中どんよりとした雲が空を覆い、時おり突風が吹き荒れ強い雨が地面を叩くという典型的なラリー・グレートブリテンのコースコンディションとなった。そんな中、レグ 1 、レグ 2 ともにトップで終えたグロンホルムは、最終日のレグ 3 は全く攻める必要がなく余裕のクルージングモードで 1 位フィニッシュ。
一方、2 位争いはなかなか白熱。2 位のマンフレッド・ストール(プジョー)を 49.9 秒差で追うペター・ソルベルグ(スバル)は、レグ 3 オープニングの SS14 でフルアタックを敢行しベストタイムをマークしてストールとの差を一気に 33.8 秒に縮める。しかし続く SS15 ではタイヤのパンクが原因でスピン、今度は逆に 53.6 秒に差が開いてしまう。しかし執念深いソルベルグは最後まで諦めず、SS16 でファステストタイムを刻み懸命に追い上げるが、結局 19.7 秒届かなかった。ストールは 2 位フィニッシュとなり、これが自己ベストリザルト。今シーズンはコンスタントに成績を上げていた印象があるが、そういえばまだ 2 位にはなったことがなかったか。
ソルベルグはなんとか 3 位に入ったものの、結局今年は一度も勝つことなくシーズンを終えることになった。まあなにせインプレッサ WRC2006 の戦闘力の低さはいかんともしがたい。走る度にどこかが壊れ → その遅れを取り戻すために無理してアタック → 限界を超えてクラッシュ → とほほ の繰り返しじゃ勝てるわけもない。以下、4 位にはチェビー・ポンス(シトロエン)を逆転したヤリ-マーティ・ラトバラ(フォード)、5 位はポンス、6 位はクリス・アトキンソン(スバル)という最終順位であった。
というこで今年の WRC も全戦終了したわけだが、結局というかやはりというか、セバスチャン・ローブ(シトロエン)の強さだけが印象に残った一年だった。何しろローブは今年参戦した 12 戦のうち 8 勝をマーク、しかもそれ以外も全て 2 位フィニッシュという驚異的な記録を叩き出し、正に王者の風格。トルコラリーの前のトレーニング中に自転車から落車して右腕を複雑骨折、トルコ以降の 4 戦を欠場するというまさかのアクシデントはあったが、それにもかかわらず余裕のドライバーズタイトル獲得である。4 戦も休んだのにチャンピオンになってしまったローブを称えるべきか、むざむざ指をくわえているしかなかったその他のドライバーが情けないのか、まあその両方のような気もするが、なにせとにかくローブは強すぎる。
そんなわけで今年はこれで終了したわけだが、来期の見所を強引に列記するとこんな感じか。
・新車 C4 の出来とローブ 4 連覇はなるか?
・フォードはマニュファクチャラータイトル 2 連覇を守れるか?そして契約満了を迎えるグロンホルムはどうするのか?
・新規参入するスズキの実力は?誰がドライバーに抜擢されるのか?
・いい加減、スバルは勝てるのか?
・三菱って戻ってくるんだっけ?
来年の話題としては、まずはやはりめでたくワークスエントリに戻ってくるシトロエンとローブの強さがどこまで続くのかである。だが、はたして新型 WR カーである C4 WRC の実力はどうか。ターマック(舗装路)でのマシンセッティングの熟成は進んでいるものの、グラベル(未舗装路)ではまだもう一つ安定度に欠けるという噂もあるし、新型車の出来いかんによってはさすがのローブをもってしてもしばらくは勝てない可能性もある。
一方で今シーズン絶好調で、実に 27 年ぶりとなるマニュファクチャラータイトルに輝いた名門フォードは、その栄光を来年も勝ち得ることが出来るか。フォーカス WRC の熟成がさらに進み、グロンホルムの未だ衰えを知らない速さと、セカンドドライバーであるヒルボネンの安定度が来年もそのまま維持出来れば、十分連覇は可能であろう。またシトロエン C4 の出来次第では、グロンホルムはドライバーズタイトルも狙えるはずで、シトロエンとローブの牙城をついにつき崩すことも十分考えられる。フォードとの契約は来年いっぱいで満了になり、その後は引退という噂もあるだけに、最後の花道をダブルタイトルで飾るべく気合いが入っているに違いない。
それと、ここ一年半ほど最悪な状態だったスバル勢も、捲土重来を期し巻き返しを狙ってくるはず。また来期から WRC に参戦することが決定したスズキと、長い休眠期間を終え、ついに WRC に帰ってくる(はずの)三菱の動向も大変気になる。その他、今年メキメキと実力を発揮しだしたヒルボネンやダニエル・ソルド(シトロエン)、マンフレッド・ストール、チェビー・ポンスら若手の台頭もポイントか。
ともあれ、来年もまた火花散る全開バトルを期待したいところ。