世界ラリー選手権(WRC)の第 11 戦はラリー・ジャパン。北海道の帯広市を拠点に、9 月 1 日から三日間にわたって開催される。
WRC で唯一のアジアラウンドであるラリージャパンは、2004 年に WRC 昇格以来、今年で三回目の開催。しかし目出度く WRC イベントになったのはいいが、極東のさらに北に遠く離れた島の、そのまたさらに奥地で開かれるイベントだけに、参加するチームからはロジスティックの経費や日程的な問題からあまり評判はよろしくないようだ。だが WRC の他のイベントと比較しても多くのスペクテイター(観客)を集めることで知られ、昨年は三日間の競技中、のべ 20 万人の集客を数えたという。もちろんそのほとんどは日本中から集まったラリー馬鹿な人々。さすがはヲタクとマニアの日出づる国ニッポンの面目躍如たるエピソードだが、もし私が今も日本にいたとしても多分見に行ってないかもしれない。なにせ帯広は中途半端に遠すぎる。どうせ金と時間をかけて見に行くなら、海外のイベントの方がよっぽど良いような気がするけどなあ。余計なお世話ですか。
気になる勝負の行方だが、今年はどうなるか。過去二回のラリー・ジャパンの勝者は初回の 2004 年がペター・ソルベルグ(スバル)、二回目の昨年はマーカス・グロンホルム(当時はプジョー、現在はフォード)。今年もこの二人に加え、王者セバスチャン・ローブ(シトロエン)の三人が優勝候補だろうか。個人的な予想では勝つのはグロンホルムとみた。グロンホルムは前戦の母国イベントであるラリー・フィンランドで優勝して登り調子なうえ、愛機、新型フォーカス WRC2006 も絶好調。大きなトラブルさえなければ、なんとか逃げ切れると思われる。ただローブも今年は全てのイベントで優勝か二位という恐るべき安定度を誇り、今回のラリー・ジャパンでも当然優勝を狙ってくるはず。ちなみにもし今回勝てば WRC 史上最多勝利ドライバーとなる。その歴史的瞬間を日本の地で達成してもらうのも一興ではある。
上記 “ビッグスリー” の中で最近すっかり影が薄くなってしまったのがソルベルグ。思えばちょうど一年前のラリー・ジャパンで最終日までトップにいながら、コース上の石にヒットして涙のリタイヤをしたのがケチのつき始めだった。その後もオーストラリアでは飛び出したカンガルーに衝突したり、今年に入ってからはマシンの信頼性の問題でトラブル続出、さらに焦って限界を超えクラッシュの憂き目にあうなど悲惨な状態が続いている。しかし今回はチームであるスバルのご当地だけに、思い入れもひとしおだろう。いつもグロンホルムとローブばかりが勝っても面白くもないので、是非ともソルベルグには捲土重来を期待したい。
その他若手勢ではクリス・アトキンソン(スバル)、ミッコ・ヒルボネン(フォード)、ダニエル・ソルド(シトロエン)あたりが上位争いに絡んでくるはず。アトキンソンは昨年のラリー・ジャパンでは堂々の三位表彰台に登る大活躍を見せ、今年はさらにその上を狙って気合いを入れているに違いない。今年、日の出の勢いで快進撃を続けるヒルボネンとソルドも、表彰台はもちろん、あわよくば初優勝も、と思っているはず。上位三人と彼ら生きの良い若手ドライバーとの全開バトルも注目である。
でも今年の大注目ポイントはやはり、久々に WR カーに乗って参戦する新井敏弘なのは間違いない。昨年の PWRC 世界チャンピオンの功績が認められ、スバルより WR カーに乗る栄誉を与えられたわけだが、なにせここは母国イベント。しかも過去二回のラリー・ジャパンではグループ N で無敵の二連勝と、道を知り尽くした地の利もある。トラブルなく実力を発揮できればポディウム(表彰台)は十分狙えるはず。さすがに優勝はちょっと厳しいだろうが、上位陣に波乱が起きれば、もしかしたら、という可能性はある。是非とも「世界のトシ」の名を、日本の大地に刻み込む走りを見せてもらいたいもの。
と、こうやってつらつら書いていたら見に行きたくなってしまった。しかし帯広は遠い。仕事ももちろん休めない。大人しくネットで観戦するしかないか。
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