日本にいた頃は単なる電子技術屋のおっさんだった私だが、それが一年ほど前に北京に来て、とりあえずは肩書きだけはえらくなったわけである。わけだったのだが、しかし肩書きがえらくなると、どういうわけだかそれ相応の仕事や責任がドーンと増えるのがサラリーマン稼業の辛いところであり、そして不思議なところだ。特にこの時期、今までは年末だからと言って普段の仕事にあまり関係はなかったのだが、肩書きがえらくなると状況はガラッと変わるのだった。
まあ何せ肩書きがえらい人の年末はとにかく忙しい。ただでさえゴチャゴチャクソ忙しい通常業務に加え、来年の開発計画だの次年度予算だの人員計画だの年末の人事考課だのが、面前列をなすの如くどどどっと一気にやってくる。かてて加えて今年の総括をまとめてレポートにしろだの社員研修用の技術系テキストを一週間で作れだのその講師はお前がやれだの今まで溜まったトラブルを今年中にケリをつけろだの歯茎から膿が出てビビッただの歯医者に行ったら歯をくり抜かれて中身をごっそり掻き出されただの麻酔が今一つ効かなくてすげえ痛えんだよこの野郎いやこの野郎ってえのは先生様のことじゃなくてほれ誰に言うでもないごく一般的な代名詞というかでも痛かったら言ってくださいねって大口開けた状態でどうやって言えっつうのあんたもしかしていい歳こいた強面のオヤジが痛みに耐えつつ馬鹿面下げてアガアガ言ってるところを見て楽しんでるだろそうだろそうに違いないチキショーやっぱり貴様なんかこの野郎だいやすいません今のは嘘ですほんとですいやだからほんとの嘘ですもう言いませんごめんなさいだからお願いですから麻酔の量をもうちょっと増やして痛いんだってマジで痛いんだってすげえ痛いんだってあんた人の話全然聞いてねえだろ全く聞いてねえだろいや俺もこの状態じゃ話せないんだが日本人なら阿吽の呼吸というか目で話すというか気配で察するというかそういうのがあるじゃないですかだからその無表情で淡々と事務的に機械的にタービンで歯をゴリゴリ削るだけじゃなくてたまには患者の目配せをアイコンタクトを確認するのも必要じゃないか俺はそう思うとってもそう思うもの凄くそう思うだからそこは痛いんだってさっき削ったら死ぬほど痛かったんだってまた削るのかそこを削るのかやめてやめてやだーやだーうぎゃーだの、まあその後半はどうでもいいことだが、ともかくこれでもかこれでもかという勢いで諸々が一斉に降りかかってきたおかげで、すっかり blog の更新が滞るのも仕方がないと思いませんか、と誰に言っているのか知らんが、そういうわけである。
えー、要約すると、いくつになって歯医者は怖いという話である。