世界の多くの国と同じように、ここ中国でも日本製アニメの人気は非常に高い。古くは「一休さん」「魔女っ子メグちゃん」などに始まり、「ドラゴンボール」「ドラえもん」などの王道ものや、最近では「名探偵コナン」「ちびまる子ちゃん」「スラムダンク」「テニスの王子様」「クレヨンしんちゃん」といったものも中国語で放送されており、北京や上海などの都市部はもちろん、おそらく中国全土で大人気となっている。私もたまに見ることがあるが、中国語の勉強にもなってなかなか面白い。中国語で絶叫しながらバスケットボールを追う桜木花道や流川楓の姿はなかなかシュールではあるが。
ところがこの九月、中国のテレビでゴールデンタイム (午後 5~8 時)に海外のアニメの放映を一律に禁止する政策が発表された。今回の措置は特に「日本製」と明記しているわけではないが、中国で人気のあるアニメのほとんどが日本製であることから、事実上のターゲットは日本アニメであることは明白である。この措置の狙いはまず一つには産業保護という題目である。中国はソフト産業育成の一環として国産アニメの強化を強く打ち出しており、今後は中国製アニメを率先してテレビ電波に乗せる腹づもりらしい。そしてもう一つは「文化侵略阻止」。日本文化の影響が子供たちにあまりに強く及ぶのは好ましくないという、これまたいつもの論調ではあるが、おそらくこちらが本当の理由だろう。
この発表を受けて中国国内では「海外文化に青少年が影響を受けすぎている」として規制に賛成する声が目立つようだが、もちろん規制に批判的な声も根強くあり、議論を呼んでいるようである。とりあえず政策は発表されたものの、現時点ではどこまで徹底されるのかはよく分からない。しかし中国の放送メディアはほぼ完全に中国共産党の指導下にある。なので共産党が本気で日本製アニメを禁止しようと思えば難しいことは一つもない。おそらく本当に実施されるものと思われる。
この発表に関して北京映画学院内の孫立軍・アニメ学院長なる人物はこんな発言をしている。
■ 中国 日本アニメ制限、代わりは「抗日」 愛国教育に躍起!?
この御仁、「異なる文化の交流、吸収は必要だ」となかなかもっともらしいことを言ってる一方で、“インターネット上の討論で「日本アニメがすべて良いわけではない」と書き込んだところ、日本アニメの擁護派から「無知」とまでののしられた。中国のアニメ専門家として非常に傷ついた”などと子供みたいなことも言っている。まあ“一流アニメは一連の宮崎駿監督作品や「一休さん」「鉄腕アトム」、二流は「ちびまる子ちゃん」「名探偵コナン」、三流は「クレヨンしんちゃん」「美少女戦士セーラームーン」「スラムダンク」”などと頓珍漢なことを言っているぐらいだから、そりゃ馬鹿にされるのも当然ではある。この人、たぶん日本アニメをまともに見ていないか、もしくは見ていても内容をちゃんと理解していないのだろう。
日本アニメの替わりには、この学院が七年近くかけ製作した抗日アニメが放送されるそうだ。このアニメは「抗日の貧しく、苦しいときに主人公の子供が快活に成長していく極めて有名な話」だそうで「民族主義や恨みを扇動するものではない。一人っ子政策による身勝手な『小皇帝』への愛国および教育的な意味だ」とのこと。そうですか。いや私、不勉強にしてそのお話を存じ上げませんが、どこを取っても民族主義や恨みを扇動する内容だと推測出来るんですが。
ちなみに同僚で日本アニメマニアの若い中国人スタッフにこの話をしたところ、「どうせ海賊版の DVD やVCD を買うかネットでダウンロードするから、テレビで放送しなくなっても全然困らない」とのこと。抗日アニメについては「絶対つまらないから見ない」だそうで。そりゃそうだよな。
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