いささか旧聞に属する話題だが、中国では 6 月 1 日から「商品小売場所プラスティック製買い物袋有償使用管理辯法」という法律が施行された。長ったらしいので要約すると「レジ袋禁止令」、つまりはコンビニや商店などで商品を包むプラスチック製の袋の使用が有料になるという内容である。
この法律の施行により、中国全土の小売店が無料でレジ袋を配布するのが禁止され、違反した店にはかなりの金額の罰金が科せられる。罰金額は地域によって違うようだが、概ね数万人民元、日本円にすると数十万円だから、罰則としてはかなり重い。
実際、今月になってからコンビニやスーパーに行くと、会計を済ませた後に必ず「袋いるか?」と聞かれるようになった。「要らない」と言えば当然くれないが、「要る」と言えばこれまた当然ながら有料である。袋の値段は大きさによって異なり、セブンイレブンなどコンビニでは一番小さい袋が 0.2 人民元(約 3 円)、ちょっと大きなスーパーやデパートの食品売り場では大きな袋が 2 人民元(約 30 円)となっているのを見かけた。安いようで、結構高い。
金が絡むと異常に敏感になる中国人のこと、たとえ払う金額はわずかでも出て行く金は許し難いのか、そこそこの効果をあげているようである。言われてみれば道行く人でプラスチックのレジ袋をぶら下げている人はずいぶん減ったような気がする。ただしいわゆる「エコバッグ」はまた浸透していないようで、野菜やペットボトルなどをむき出しのまま両手で抱えて闊歩するオバちゃんを見かけることもある。
この法律はもちろん昨今喧しい環境問題に配慮したものであり、新聞記事などによるとこの法律の施行によって年間数万トンの石油が節約できるらしい。まあ確かにやたらと人の多い中国のこと、レジ袋の使用量だって半端ではなかったはずで、こうして無理矢理にでも使用を制限すれば相当な資源節約になるのは道理である。
またそうした資源節約の他に、違法なレジ袋の販売・製造業者を取り締まる意味合いもあるらしい。中国では悪質なレジ袋を作って売る業者が相当数いるらしく、廃品から回収されたプラスチックや恐ろしいことに医療廃棄物を二束三文で買い上げて無理矢理レジ袋を作るもの、コストを安く上げるために超薄型のレジ袋を製造販売するものなどが正規の認可を受けずに存在するという。そう言えばローカルの市場などに行くとペラペラに薄いプラスチック袋が出てくることがよくあるが、ああいうのも違法業者の手によるものだったのかもしれない。まあそうした輩をきちんと取り締まってくれるのなら結構なことである。
ちなみに、この法律は今年の 4 月 18 日に審議され、5 月 15 日に発布、そして 6 月 1 日に施行と、超スピードで実行された。こういうところはさすが共産党独裁国家というか、お上の力が絶対だからこそ出来る技である。これが日本だったら、プラスチック袋製造業団体の大反対やら野党の反対のための反対やら、関係省庁や小売店業界との調整やらで、軽く数年はかかるに違いない。独裁体制も、良い方に進むこともごくたまにはあるもんですな。
そういえば日本では数万円もするブランド物のエコバッグが流行ったという。豪気なことよのうというか、ある意味さすがは世界に誇る日本のスイーツ脳さんたちというか、やっぱり正気の沙汰とは思えないが、はたして中国ではどうか。さすがにそこまで高価なバッグは市井の人は買わないだろうが、「劣悪な作りのエコバッグを売る違法に業者」なんてのが出てくる予感がしないでもない。「エコバッグ禁止令」が発布されないことを祈るばかりである。