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福井晴敏によるガンダム小説の第四巻。表紙の安彦良和御大の絵でだまされるかもしれないが、漫画ではなくれっきとした小説である。ちなみに第三巻までは表紙以外の挿絵も全て安彦良和が描いていたが、何故かこの本からは別の人になってしまった。残念。
本巻では、前巻でネオジオンに強奪されたガンダムの奪還作戦を中心に、様々な物語が展開する。いよいよ「ラプラスの箱」の謎が明らかになるか、と思ったがそれはまだ先のようで少々じれったいが、しかし今作もガンダムらしさ、そして福井晴敏らしさ満載である。特に作戦行動のシーンは福井晴敏が最も得意とする描写であり、臨場感や緊迫感は代表作「亡国のイージス」や「終戦のローレライ」に勝るとも劣らない。戦闘の舞台をイージス艦や潜水艦から宇宙に移せども、ひたすら熱く、かつ時に暑苦しいまでに筆圧高く描ききる力量はさすがである。エコーズの部隊ナンバが「729」と「920」だったりして、福井ファンへのサービスポイントも用意されているのが憎い。また作戦用のモビルスーツとして、変形する百式が登場するのもポイントか。やっぱり肩に「百」と書いてあるんですかね。
ストーリーも俄然盛り上がる。昼行灯だったネェルアーガマの面々が重大任務を帯びての意識変革、リディ少尉とオードリー・バーン（ミネバ・ザビ）の世界を変えるべく決意、バナージとマリーダの触れ合いなど（ここはかつてのアムロとララァのオマージュか）、大きな責任と義務、そして業を背負った人間同士の関係や心理が丁寧に描かれる。また後半では強化人間で鉄の心を持つマリーダの過去も明かされる。これがストーリーを一段厚くすることになるわけだが、しかしつまびらかにされた事実はあまりに悲惨で、悲しい。
次巻は舞台を地球に移し、ついに「ラプラスの箱」の謎が解明されるのか。ラプラスの箱が発動するという座標が一体どこなのか大変気になるが、気になると言えばもう一つ、ネオジオンの「シャアの再来」ことフル・フロンタルの正体もはたして誰なのか。再来だけじゃなく、やはり本人か。
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