日本にいた頃も定期的にジョギングしていたので北京でも是非とも走ろうと思っていたのだが、なにせ北京は空気が悪い。ぜーハーぜーハーと汚れた空気を肺の底まで吸いまくると、せっかく健康のために走っているのにかえって呼吸系に取り返しのつかないダメージを与えてしまう気がしないでもない。
また北京の街の作りが、日本やその他の国の都市と比べて歩行者に対する配慮が格段に足りないのもジョガーとしては辛い。まず歩道が少ない。あっても工事施行がいい加減なのか作った後のメンテナンスが悪いのか知らないが、ボコボコと波打っている箇所が多く、走るどころか歩くのすら困難な場合もある。
さらに交通事情というか交通マナーの悪さが追い打ちをかける。とにかく道路は車が優先であり、横断歩道はあることはあるが、そこに歩行者が横断中だろうがなんだろうがお構いなしに車が突っ込んでくる。さすがに地元の人は慣れたもので、突進してくる車を紙一重でかわしつつヒョイヒョイと渡っていく。私もここで一年以上暮らしたこともあって最近はだいぶ要領が分かってきたが、これがジョギングとなると話は別である。こちらもあちらもそれなりの速度で異なる方向に進もうとしているわけで、危険度はかなり上がるような気もする。
車と並んで爆走自転車軍団も大変危険な存在だ。これが日本的平和博愛主義な感覚であれば、歩行者の側を通過する時は一応減速するとか感覚を空けるなどと考えるものだが、彼らもまた歩行者に対して配慮するとか危険だから譲り合うという概念が根本から欠落している。車と違い走行音が聞こえにくいのも難点である。背後から何となく気配がして振り向くと、爆走自転車がまるでステルス戦闘機の如くすぐ脇すれすれを猛スピードで駆け抜けていくことも良くある。もしあと一歩左右どちらかに踏み込んでいたら衝突していたに違いないと冷や汗をかく。とこういうわけで、ある意味無政府状態である北京の街角で呑気にジョギングなどしたら命がいくつあっても足りないのである。
しかしありがたいことに、私が現在住んでいるマンションにはジムが併設されているのだった。若干こぢんまりとした作りではあるものの、トレッドミルや各種トレーニング用マシンなどが一通り揃っており、それなりに充実した設備となっている。おかげで呼吸器汚染や車や自転車と激突して怪我や命の危険をおしてまで外でジョギングすることなく、適度に空調が効いた快適な室内で思う存分走ることができるわけである。
ということで週に三、四回ほど、一回 12km から 15km ばかり走っているわけだが、これもまた室内ジョギングのありがたさというか、ジョギングのお供としてヘッドフォンステレオにて音楽を聴くことが出来るのだった。これが外で走らざるを得ないとして、ただでさえ危ないのにさらに音も聞こえない状態だったら正に自殺行為だもんなあ。
ちなみに音楽リスニングデバイスとしては iPod nano を使っており、形状や使い勝手などは概ね満足している。しかし唯一の不満はその音質である。シャカシャカとやたら高音寄りで、中低域の響きも粘りも全くなく、正直言って我慢ならないレベルであった。いろいろ調べてみると、これは iPod 自体の問題ではなく、その原因は標準付属のイヤフォンがあまりにショボすぎるためであるらしい。確かに標準のイヤフォンは見た目もなんだか安っぽく、そりゃこれじゃまともな音なんて出るわけがないとも思える。そこで更に調べて、現在イヤフォンは KOSS の The Plug という、その筋では有名なインナー型イヤフォンを使っている。このイヤフォンは低音域の再生に定評があり、使ってみると確かに豊かな、というより爆音と呼んでも過言ではないほど強烈に中低域を出力してくれる。なので、私が好んで聴く HR/HM 系の音楽には正に最適のイヤフォンである。
ちなみにここ最近ヘヴィローテーションで聴いているのは、日本が世界に誇る メタルウェポン ANTHEM の最新作、目出度く再結成したドイツの叙情派メロディアスハードの雄 FAIR WARNING の新譜、および元祖激烈暗黒スラッシャー SLAYER の最新アルバムである。これらを聴きながら一時間半ばかり無心で走れば、日頃のストレスも何も全てが吹っ飛んでいく。いやー、HR/HM ってほんとに良いもんですね。Metal up your Fxxkin' ass!
そんなわけで私の健康と心の平穏を保つため、素晴らしい音楽を聴きながら日々走っているわけだが、こんなちょっと気になる記事も。
■ iPod難聴を防ぐ「80×90」ルール
1日に90分以上、デジタル音楽プレーヤーのイヤフォンで大音量の音楽を聴いていると、聴覚にダメージを受ける可能性がある。最新の米国の調査で指摘された。
博士課程の学生100人を対象に行われたこの調査では、大音量と考えられるレベルの80%の音量で音楽を聴いている人は、「1日に90分未満」を守るべきだという結論が下された。
体と心が健康になっても耳が悪くなってしまったらしょうがない。出来る限り音量控えめを心がける私である。