2007 年 WRC 第九戦はラリー・フィンランド。このラリーは、アスファルトのように固くしまったグラベル(未舗装路)が特徴で、最高時速は 200km/h を超えるという WRC でも屈指の高速ステージである。ステージ中には多くのクレスト(隆起)があり、そこを超ハイ・スピードで突っ込んでいくラリー・マシンが、時には 50m を超えるほどの大ジャンプを見せるのが大人気のラリー。またかつて「1000 湖ラリー」と呼ばれたほどコースステージ周辺にはたくさんの湖や森が広がっていて、そうしたフィンランドの美しい大自然と世界最高峰のラリー・マシンとの対比が、WRC カレンダーの中でも屈指の人気を誇っている。
その高速バトルを制したのは、地元フィンランド出身のマーカス・グロンホルム(フォード)。今回のラリーからフォードはニューマシン「フォーカスRS WRC07」を投入。前身である 06 年型モデルからは、前後のフェンダーとリアウィングの形状を変更して空力性能を高めたほか、エンジンの軽量化でマシンのバランスを最適化。WR カー随一と定評のある足まわりや駆動系ユニットなどは手を加えずに、細部の熟成に注力した「正常進化バージョン」らしいが、フォードの狙いは的中。結果として 23 本の SS 中、17 本のステージでトップタイムを叩き出すという堂々たる勝利で今季4勝目を獲得した。なんでもグロンホルムはこのフィンランド戦の後に来年以降の身の振り方(引退も含む)を発表するらしいが、実力、実績ともにまだまだ十分世界最高峰のラリー・ドライバーである。というか、今グロンホルムがいなくなったら、誰がセバスチャン・ローブ(シトロエン)を負かすことができるのか。
2 位には同じくフォードのミッコ・ヒルボネン。チームメイトのグロンホルムに追いつくことはできなかったが、それでもグロンホルムとの差は 24 秒と同格の走り。地元のフィンランドだったということを差し引いても、このタイムは見事の一言に尽きる。数年前までは、ここ一発は早いながらも安定感に欠けることが多かったが、フォードに移籍してからは猛烈な成長を遂げ、今やすっかり表彰台の常連である。あのミッコがねえ、と老 WRC ファンとしては実に感慨深い。
3 位にはシトロエンのセバスチャン・ローブ。ローブは未だフィンランドで勝ったことがなく、今年こそはとの意気込みはあったはず。だがローブとシトロエン C4 WRC の「世界最速パッケージ」をもってしてもフィンランドの壁は厚かったか。今年の WRC はこれから後半にかけて得意のターマック(舗装路)ラリーが続くので、そちらで挽回というところですかね。
以降、4 位はクリス・アトキンソン(スバル)、5 位はヘニング・ソルベルグ(フォード)、6 位はチェビー・ポンス(スバル)。MMSP がプリペアした三菱ランサー WRC05 で出場したウルモ・アーヴァが 7 位に入って、三菱ヲタの私としては嬉しいところ。
スバルのエース、ペター・ソルベルグは、またしてもまともにラリーを走ることが出来なかった。レグ 1(一日目)にいきなりデフのトラブルに見舞われ、ほとんど 2WD 状態での走行を強いられる。さらにオーバステア気味のハンドリングに悩まされ、それらはサービスで対策を施して一時は改善されたものの、レグ 2 で再びデフとステアリングのトラブルが再発。チームはマシンの状態を調べるために競技続行を断念して、哀れ二日目でリタイヤする羽目になった。チームメイトのクリス・アトキンソンのマシンはほとんどトラブルはなく、無事に 4 位フィニッシュしているわけで、ここまで来ると何かの呪いとか祟りとか非科学的な何かが作用しているのでは、としか思えなくなる。せっかく前戦のアクロポリスでは久々の表彰台に登って、やっとこれから復調かと思ったのにまたこれでは、いい加減、本人のやる気も失せてくるのでは。
ふと思い立ち、Youtube でラリー・フィンランドの動画がどこかに落ちてないかと検索したら、早くも今年のラリーの動画があったので貼っておく。しかしまあほんとに、どうやったらこういう風に車が動くんでしょうか。
次回はラリー・ドイチュランド。
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。