先週の金曜日から土曜日にかけて(つまりは一日会社をサボって)一泊二日の旅行へ行ってきた。行き先は山梨県勝沼。この真冬の頃合いになぜ勝沼か。実はここ最近日本のワインのレベルアップが大変著しく、中でも勝沼は非常に高品質なワインを数多く産出しているという話を聞きつけたのである。それが本当かどうか、その真偽を確かめるべく今回の旅行は企画されたのだった。
というのは口実で、ほんとうのところは町営の安い温泉宿が取れたというのが真実である。なんでもその宿には地下にワイン・カーヴがあって勝沼産ワインの試飲が飲み放題ということだけれども、なにせ所詮は日本産のワインである。どうせボディも香りもへったくれもない、ヘナヘナな葡萄ジュースが関の山。あくまでも今回の旅行の本命は、温泉に浸かりつつ山梨名物ほうとうを腹一杯喰らい、ついでにちょっと足をのばして八ヶ岳まで蕎麦でも、ということで、ヘタレなワインは二の次三の次と思っていたのである。
ところが同行者お勧めの「勝沼醸造」でワインを試飲させてもらったところ、私のそうした浅はかな日本産ワインに対するネガティヴなイメージはいっぺんに覆ってしまった。全種類試飲させてもらったが、そのどれもが美味しい。それも素晴らしく美味い。本当にこれが日本のワインなのか。
なかでも個人的には「アルガブランカ イセハラ」が大変気に入った。蜂蜜系の甘味が感じられる弱甘口の白ワインだが、柔らかめでくどくはないのにすっきりとした酸味があって、またほのかな樽香も大変香ばしい。テイスト的にはボルドーのソーヴィニヨン・ブランものやカリフォルニアあたりのピノ・グリものに似ている気がするけれど、そのどれとも違う堂々としたオリジナリティがある。いや驚いたですよほんとに。こんなポテンシャルを持ったワインが日本の、それもこんな近くにあったとは。正直言って目から鱗である。
すっかりワインモードになったところで、いい時間になったので宿へ向かう。チェックイン後、荷解きもそこそこに、この宿ご自慢の地下ワインカーヴへ直行。ここのカーヴには勝沼周辺で収穫された葡萄を使って作った約百七十銘柄のワインが赤・ロゼ・白それぞれ棚に陳列されており、所定の金額(1,100円)を払えばその全てを試飲できるのである。しかもいくら飲んでもオッケーの飲み放題。素晴らしい。さっそく受付にて試飲用タートヴァン(こんなものがあるとはここで初めて知った)を受け取り、あとは片っ端から飲むべし、飲むべし、のーむーべーしー。
端から順にいろいろ飲みくらべてみて、またもや素晴らしいワインを発見した。「大和葡萄酒」の「遅摘み甲州」と「鳥居平甲州」である。どちらも山梨産の葡萄である「甲州種」を使った白ワインだが、これまた「勝沼醸造」のワインに勝るとも劣らない出来。特に「鳥居平甲州」は個人的ツボにすっぽりはまった。酸味がしっかりと主張したドライタイプで、深い味わいのコクと樽熟成によるアクセントもほどよくあり、非常に飲みやすいわりにインパクトの強いワイン。これまたとても日本産とは思えないほどのクオリティである。あまりの美味さに飲み放題をいいことにガンガン飲みまくり、あっという間に四人で一本空けてしまった。試飲料の元は完全に取ったと言えよう。ちなみに「鳥居平」がすっかり気に入ってしまったので、翌日ワイナリーに行って直接お買い上げしたのは言うまでもない。
ということで、当初の思惑が良い意味で裏切られたこととなった今回の旅行である。日本の、とりわけ山梨のワインがこんなに素晴らしいことになっているとは思いもよらなかった。ううむ、勝沼恐るべし。
なんでもこれらのワインは生産量がそれほど多くなく、通常の酒屋などに卸されることはあまりないらしい。楽天など通販でも購入できるそうだが、機会があれば是非ともワイナリーを直接訪れて試飲しながら好みのワインを選ぶことをお勧めしたい。マジで驚きますぜ。
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