WRC 第十一戦はウェールズ・ラリー GB。例年なら 十一月に行われるこのイベントは、今年はカレンダーが変更されて九月のこの時期になった。ラリー GB、かつての RAC ラリー というと WRC 最終戦というポジションが長年の伝統だったで、シーズン終盤のこの季節に開催されるとなんだか変な感じがする。
ということで開催時期を移したラリー GBだが、季節が初冬から秋になったためこれまでにないドライでクリーンなコンディションが予想されていた。しかし始まってみるとイベントを通して雨と霧がコースを支配するという例年と変わらない天候により、コース状況は完全なウェットに。しかも、ところどころにマッドな泥の海が顔を見せ、非常に滑りやすく難しい、いつものラリー GB と変わらないコンディションで戦われることになったようだ。やっぱり泥でデロデロじゃなきゃラリー GB じゃない。
結果は、スバルのペター・ソルベルグが残り 2 ステージで、シトロエンのセバスチャン・ローブを大逆転。前戦のラリー・ジャパンに続いて今シーズン 4 勝目を記録した。これでソルベルグはラリー GB 三連勝。もともと伝統的にスバルはこのラリーには強いとしても、堂々の三連勝は立派だ。3位にはフォードのマルコ・マルティン、4位にはシトロエンのカルロス・サインツ。
それにしてもこのラリーでのソルベルグとローブの一騎打ちは見応えがあった。なにせ二日目が終わった時点でトップのローブと続くソルベルグの差は、わずか 7.3 秒。二日間合わせて 400km 以上の SS を一台ずつ走って、たった 7.3 秒しか差がないというのも凄いが、そこから最終日、レグ 3 でのソルベルグの猛烈な追い上げは、正に手に汗握る全開アタック。オープニングの SS16 はソルベルグがコースオフしてローブとの差を広げられたが、続く SS17、18 と連続ベストを叩きだし、遂に大逆転で首位に躍り出た。そして圧巻は SS18。後半の10km弱で 9.2 秒という大差を築いて見せた。これぞ渾身の火の玉アタック。凄すぎる。以前のソルベルグだったら気持ちだけ空回りしてコースアウト → リタイヤという玉砕パターンだったのに、見事な走りで形勢をひっくり返すあたり、さすが昨年の王者は伊達じゃない。まあ最後はローブが意図的にペースダウンしたってのもあるとしても、最終日ギリギリになっての劇的な大逆転。千両役者ですな。よし、これから君を「WRC 界の新庄剛志」と呼ぼう。知りませんか日本の野球選手なんて。
ただ、今回は二位に甘んじたとは言え、今シーズンのドライバーズ・タイトルでのローブの優位は変わらない。これでドライバーズ・ポイントは、トップのローブが 92、二位のソルベルグが 64。残り四戦で仮にソルベルグが全勝したとしてもポイント数は 104 だから、ローブはあと 13 ポイントをこつこつ貯めれば王座につくことになる。とりあえず残り四戦を完走目標でクルージングして走れば、ローブの実力なら十分ポイントゲットは可能だろう。逆にソルベルグはもう一戦も落とせないわけだが、しかし四戦の中にはローブの得意なターマック(舗装路)イベントが二つも残っている。これもカレンダーの巡り合わせとはいえ、ソルベルグにとっては非常に厳しい状況だ。
しかし勝負は水物。しかも最後までなにがおこるかわからないのが WRC である。今年も最終戦のオーストラリアまで目が離せませんよ奥さん。
参考URL:
三菱 WRC
SUBARU MOTOR SPORTS
World Rally Championship Official