アウトドア系のサイトをあちこち渡り歩いていると、ちょっと前からやたら目に付くのが「ダッチオーヴン」なる代物である。ダッチオーヴンとは要するに鉄で出来た肉厚の鍋のこと。元々はアメリカのカウボーイが使っていた料理道具だそうだが、重厚で簡単な構造のわりに焼く、炒める、煮る、蒸すと様々な使い方ができ、非常にバラエティに富んだ料理に使えるという。しかもフタにも重量があるので、中身が沸騰しても持ち上がってしまうことがほとんどなく、圧力鍋と同じような使い方ができるので、時間がかかるシチューなど早く、おいしく作る事ができるらしい。
最初は、なるほど、そんなもんがあるんだねえ、程度の興味具合だったのだが、Web に散見するレシピや料理例を見ると、なにやら大変美味しそうなのである。しかもこれらの料理、材料を適当に鍋にぶち込んで、あとは火にかけるだけという、比較的簡単というか大ざっぱというか、そんないい加減な方法で十分美味しい料理ができてしまうという。そうなのか。ものぐさで面倒くさがりの私に、正におあつらえ向きの調理道具のような気が大変する。しかもこの鍋、材質は鉄だ。鍋釜から取っ手に至るまで、全身これ鋳鉄である。うおお、なんだこの求心力は。これはもう買うしか買うしか買うしかっ。
とその前に、まずは冷静になって調べてみる。なにやらこのダッチオーヴンは買ってきてすぐに使えるというわけでないらしい。なにせダッチオーヴンは中華鍋などと同じく鉄製。なので錆を防止するため、出荷時には錆止めのワックスが塗ってある。したがってダッチオーヴンを購入したら、まずは鍋を丹念に洗ってこのワックスを完全に落とし、さらに鍋全体に油をなじませるく「シーズニング」と呼ばれる一連の作業を行わないと実際に料理に使用できないらしい。そうなのか。ちなみにものの本によると、このシーズニングは、なんだかんだで半日作業の荒行だそうである。ううむ、なんだか大変そうだ。良い道具を手に入れるための道のりは長く険しいのですなあ。
ところがやっぱり世の中「良い道具は使いたいが面倒なのは嫌」という(私と同じ)ものぐさ連中がたくさんいるようで、最近はこのシーズニングを工場で済ませてから出荷している製品が存在するらしい。素晴らしい。ものぐさラヴ。
ということで、ダッチオーヴンでは定番 LODGE 社から、そのお手軽シーズニング済みシリーズの「LODGE LOGIC キッチンダッチオーブン」を購入。サイズはいろいろ迷ったが、家のキッチンで使用することをメインに考え、最終的には 10 インチサイズで「足」が付いていない「キッチンシリーズ」ものを選んでみた。
購入後、さっそく箱から取り出してみる。おおっ、確かにすでに黒光り状態。素晴らしい。ちなみに大きさは直径 10 インチ(25cm)、深さ約10cm、そして重さは 6kg。ずっしり重い。正に鉄の塊という感じである。
さっそく調理に挑戦だ。ファーストトライは、ダッチオーヴン定番の鶏胸肉のバジル焼きである。
まず白ワイン、にんにく、パセリ、バジルを混ぜて塩胡椒したマリネ液を作って鶏肉を一時間ほど漬け込む。ダッチオーヴンにオリーブオイルを引き、10 分ほど肉を焼き付けた後、薄切りトマトとパセリ・バジルを肉に載せて 5 分ほど蓋をして蒸し焼きに。鍋本体だけでなく蓋も鉄製で重いので、ほとんど湯気は漏れずにトマトの水分だけで完全に蒸し焼き状態になる。
そして完成したのが右の写真だ。ご覧の通りトマトはトロトロ。鶏肉にもしっかり味が染みて、いやあ、これが実に美味いのである。こんな簡単でいいのか、というぐらい手間いらずだが、本当においしい。
ということで、まず一発目は成功である。噂に違わずこのぶんならいろいろ遊べそうだ。とりあえず次は煮物か。