暮れも押し迫ってきた 12 月。しかし中国では新暦よりも旧暦(農歴)の新年(春節)の方がはるかに重要なので、日本の年の瀬のような年末感というかソワソワした感じはあまりない。しかし中国の会計年度では 12 月が区切りなので、肩書き上のエライ人としては仕事上あれこれと忙しいことこの上なし。正直、やってられません。
そんな中、ネットで見つけたいかにも中国らしいニュース。
■ SOHO現代城近くで陥没事故、道路は当面封鎖(12月1日 エクスプロア北京)
29日夕方6時半ごろ、朝陽区の西大望路で路面の陥没事故が発生した。これまでのところ怪我人などは出ていない。
現場は大望橋の少し南、SOHO現代城のすぐ脇の道で、日ごろから交通量の多いところ。現在地下通路の建設を行っておりその影響と見られている。
道路の真ん中に開いた穴は直径10メートルほどの大きさ。現在道路を封鎖しての復旧工事が行われているが、陥没の規模が大きいため復旧工事には時間がかかると見られている。
この影響で地下の水道管が断裂したため、SOHO現代城の各店舗では断水が続いており、給水車による水の供給が行われている。
西大望路は北京の東側にある道路で、大きな商用ビルやデパートなどが建ち並ぶ大望路付近を南北に貫き、交通量も人通りも相当多い。そんなところに直径 10m もの大穴が開いた日には下手したら大惨事にもなりかねないが、幸いにもけが人などは出なかったようだ。ちなみに事故が起きた付近は実は我が家にも近く、大望路が数日間封鎖されたおかげで溢れた車がこちらにも押し寄せ、ただでさえ渋滞する我が家周辺の道路も拍車をかけた大混雑に見舞われた。そういう意味では私も被害者か。
しかしこんなことが日本で起きたら大ニュースになるだろうが、中国では別にとりたてて扱うほどでもないという感じである。特に北京は近年の建設ラッシュであちこちでビルを建てたり地下鉄の工事をしたりしている。それに伴い、なにせこの手の道路陥没はしょっちゅう起きているのだった。ああまたか、と別段珍しくも何ともないわけだが、それにしたって工事の前に地質調査をちゃんとやるとか、陥没しないように補強を埋めるとかしないのかと思う。まあ、してないからこうして事故が起きるのだけれど。
■中国警察、コンドーム所持の女性を今後逮捕しない意向(12月1日 AFP)
中国の警察当局は、エイズ(HIV/AIDS)のまん延を抑制する取り組みの一環として、今後コンドームを携帯する女性を売春婦と見なして逮捕することをやめる意向を明らかにした。国営新華社(Xinhua)通信が11月30日、伝えた。
同通信が匿名の専門家の話として伝えたところによると、同国では以前からコンドームを携帯することは売春婦の証拠とされており、警察による女性たちの逮捕を防ぐ努力が続けられているものの、今でもそれだけを根拠に売春容疑で強制労働収容所に送られるケースがあるという。
一方、政府のエイズ予防対策当局のHan Mengjie氏の見解は、この専門家の発言と相反する。同通信は、同氏が警察による女性たちの逮捕を抑止するキャンペーンは2001年に始まったとし、「広報当局と警察当局は2001年、コンドームは(売春の)証拠と考慮されないとする指令を共同で発した」と述べたとしている。
中国には約70万人のエイズ患者がいると推定され、毎年数万人単位で感染者が増加している。
中国は実はエイズ大国でもある。記事にもある通り、判明しているだけでもエイズ患者は約 70 万人、毎年数万人単位で増加しているという。北京市のエイズ患者とHIV 感染者の総数が先頃公表されたが、それによるとエイズ患者と HIV 感染者の数は昨年同時期より 5 割増えて 4663 人となったことが分かった。そのうち北京市民は 964 人、外地人(北京に戸籍がある以外の人)は 3524 人、外国人は 171 人とのこと。ただ何につけ正確な統計というものが一切存在しない中国では、こうした数は全く信用できるものではない。おそらくさらに多くの罹患者、感染者がいることは間違いない。
さすがにこのままではまずいと思ったか、中国ではエイズ蔓延防止に向けて様々な措置が取られている。北京市内でも街角でエイズ撲滅キャンペーンの看板をあちこちで目にする。また市内のホテルでは来年以降、コンドームの配置率を 100% にしたり、今年末までには市内の中、高、大学におけるエイズ防止のための性教育も行われているそうである。時、すでに遅いのだがな、と某アニメのセリフを吐きたくなる気もするが、すでに洒落にならない状態になっている昨今、特に若年層への啓蒙と教育は火急の課題である
それはそれとしてこのニュースだ。「中国の警察当局はエイズの蔓延抑制の一環として、今後コンドームを携帯する女性を売春婦と見なして逮捕することをやめる意向を明らかにした」とのことだが、逆に言えば今まではただ単にコンドームを持っているというだけで有無を言わさずしょっ引いていたというわけか。何というか、そりゃエイズが流行るのも当たり前なんじゃねえの、と思う師走の日である。
■数百人の陳情者を拘束 北京、「法治徹底」日に(12月4日 産経ニュース)
中国で法治の徹底を図るためにつくられた「法制宣伝日」の4日朝、北京中心部にある中国中央テレビ前で、官僚腐敗などへの不満を記者に訴えようと全国各地から農民ら千数百人が押しかけたが、うち数百人が治安当局に拘束され北京南部の収容施設に送られた。
関係者によると、来年8月に北京五輪を控え、陳情者に対する取り締まりがさらに強化されているという。
同日早朝から警察車両数十台が同テレビ周辺に配置され、数百人の警官が警戒の目を光らせた。不当な農地収用などへの不満を訴える陳情者が到着するたびに、腕をつかんで当局が借り上げた大型バスに連行し、施設に収容。抵抗した一部の人は当局者に殴られ、負傷したという。
浙江省から陳情に来た女性(56)は「中国に法治など全くない。官僚はやりたい放題で、民衆のことなど全く考えていない」と批判した。
中国政府は先月「いかなる組織や個人も取材を妨害してはならない」との通達を出している。一部の外国メディアの記者が通達のコピーを警官に見せたが、警官らは「意味がない」と無視、記者らを現場から排除した。
中国で暮らし、そして仕事をしていると、嫌が上でも身にしみて思うのは、「法」というのはあくまでも施政者の為のものであって決して国民(人民)の為のものではない、ということである。これは別に今に始まったわけではなく、過去の歴代王朝もそうだったし、そして現在の共産集団独裁制にもその思想は連綿と受け継がれている。法治ではなく人治、あるいは法家である。そうした体制下では、どうしたって甘い汁に群がる人間を量産し、そして腐敗を生む。
これが前時代的な情報統制管理下であれば、腐敗の事実は世に広がることなく人知れず闇に葬られる。しかし 21 世紀を迎えた今、一台の PC さえあれば世界中の情報をたちどころに知ることの出来る時代である。裕福な都市層の人間だけでなく、地方の貧しい農民でさえ誰もが中国の現状を知っている。知れば不満がたまり、やがて爆発するのは必然である。歴史を紐解いてみると、実は中国の歴代王朝のほとんどがこうした腐敗と反発の爆発で倒れ、そして次の王朝も懲りずにそれを繰り返すという事実に気づく。
来年は北京オリンピックがあり、2010 年には上海で万博が開かれる。とりあえずそこまでは必死で何とかするだろうが、はたしてその後はどうなるか。膨れた風船は限界を超えて破裂するのか、あるいは得意の論理のすり替えでたまったガスを吸い取るのか。はたまたどこか別のところから「針」が飛んできて、膨らみかけた風船を無理矢理炸裂させるのか。どうであれ、その日は思いのほか近い気がする。