成都へ、そして南京へと。十月の後半は出張続きであった。やれやれまあまあなんとか、と北京に戻ってみると、いきなり寒い。何度確認しても、やっぱり寒い。ついに冬が来てしまったことを、認めたくはないが、認めなければならない。
北京は、秋が最もいい季節だといわれる。そんなもんかね、と以前は思っていたが、ここに二年も暮らせば誰でも分かる。夏はめちゃめちゃ暑く、冬は死ぬほど寒い。春は黄砂で人も街中も全てが真っ黄色になる。秋しかないないのである、いい季節は。
その秋が終った。終わってしまった。実に短命であった。思い起こせば一ヶ月ちょっと前、国慶節の休みの前あたりまでは半袖で過ごしていた記憶がある。その後、休みが終わってだいぶ涼しくなってきたかと思い、そして二週間ほど出張で北京を離れているうちに、もうコートなしでは外出できなくなっている。秋は二週間か三週間くらいしかなかった。まあこれも例年通りの短さではあるが、しかしこうもあっさり過ぎ去ってしまうと郷愁も何もない。
ちなみに天気予報によれば、今朝の最低気温は 4℃。これでも昨日一昨日あたりに比べると、ちょっと暖かいかなと感じる。たしか三日ほど前の最低気温は氷点下だった。日中も 10℃ いくかいかないかぐらいだったか。日本の関東地方の感覚からすると、すでに真冬である。朝、通勤する時に家を出ると息が白い。しかし寒さはまだまだ序の口なのだ。本格的に寒くなると、-10℃ を軽く下回るくらいにまで冷え込む。昨年は暖冬気味だったが、予報によると今年の年末から来年にかけてはかなり寒くなるらしい。恐ろしいことである。
こうした厳しい寒さを乗り越えるために、北京には「暖気」という大変ありがたい暖房設備が市内のほぼ全ての建物に設置されている。これはいわゆるスチーム暖房のことで、熱水が部屋中を走り、真冬でも室内では薄着で過ごせるほど快適なものである。もちろん我が家にもこの「暖気」は設置されていて、各部屋はもちろん、トイレやバスルームまで、形や大きさは若干違えど、家の中の各所に写真に示したような白いスチーム装置が配備されている。
この「暖気」システムだが、実は全て国によって管理されているのだった。暖房が入る日も切れる日も北京政府によって決められていて、また暖房代も 1 平方 m ごとにいくらと決められ、建物の広さによってそれぞれ額が違うらしい(単位面積あたりの金額は毎年変わるらしい)。まあ暖房費が徴収されるのはともかくとして、せめて暖房の入り切りぐらいはユーザに決めさせてくれても良いような気もするが、何事も一斉に初めて終わるというあたりがいかにも社会主義国家らしい方式ではある。いくら寒かろうがなんだろうが例外は一切なし。しかしその日が来たら、今度は問答無用に使うべし。お上の言うことには(表面上は)絶対服従がこの国の掟である。国の定めには粛々と従うのが同志たる人民の勤めなのであった。私は同志じゃないですが。
だがそんな素晴らしい「暖気」システムの開始日は、11 月 15 日なのだった。しかして今日は 7 日。まだあと一週間もある。長い。はるかに遠い。さらに天気予報によるとこの週末、北方から寒気が流れ込み、一気に冬が進むとのこと。寒い。しんしんと寒い。せめて二日か三日、フライングで稼働してもらえないものか。
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