神に頼って走れ!―自転車爆走日本南下旅日記 (集英社文庫 た 58-9) 高野 秀行 集英社 2008-03-19 売り上げランキング : 85674 おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
辺境ライターにして作家、高野秀行の新刊。
今回の旅は、「ウモッカ」なる怪魚を調査するためにインドに行ったはいいが、諸々の事情による入国を拒否され、日本に戻った後その悶々とした気持ちを解消するた め二ヶ月かけて東京から日本最南端の人の住む村、波照間島間までの 2,500km を自転車で走破。その折々で神社、仏閣、教会やモスク、お地蔵さんや道祖神などに「インドに行かせてください」と祈願をかけていくというもの。
しかし何の予備知識もなく本書をいきなり読んでも、なぜこの人は真冬の最中、何が悲しくてこんな酔狂かつ苦行じみたことをやっているのかを理解するのは難しいかもしれない。どうしてそんなにまでしてインドへ行きたいのか、さらに何故インドへ入国することが出来ないのかは、著者の「怪魚ウモッカ格闘記−インドへの道」と「西南シルクロードは密林に消える」を読まないと、その詳細を知ることが出来ない。そう言う意味ではエンタテインメント性の高い数ある「高野本」の中でも、感情移入という意味では若干取っつきにくい部類に入るかも。
様式としては日記形式なので、時系列や位置関係を把握しながら楽に読める。ただそのぶん、文字量が少なめで、ちょっと物足りなくも感じる。それでも内容は他の高野本のように地元の人々との交流や様々なエピソードを著者独自の視点や文体で面白く書かれており、「エンタテインメント・ノンフィクション」として楽しく読める。そもそもの目的である 神仏へのお願いは、異常にハードな自転車行の影響なのか、徐々にインド入国から遠ざかっていき、最後にはひたすら無心で手を合わせる状態になっていたのが趣深い。
自転車行脚の旅で最後に訪れた波照間島で、釣り船に乗って釣をしに行き、大物がかかるも惜しくも逃げられる。その魚がどんな魚だったのか想像するシーンで「ウモッカ」を思い浮かべる著者。なんとなくうら寂しさが漂うシーン。インド入国までの道はかなり険しそうだが、なんとか解決して謎の怪魚探しに行けるようになればいいっすね。
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