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多摩川の支流、桜川(架空の川)。自分たちの住む町を流れるこの川で、小学五年生の三人組は不思議な生き物の痕跡を発見した。彼らは、これを夏休みの自由研究の課題にすることを思いつく。こうして始まった彼らのひと夏の冒険と友情の物語。
純粋な少年少女向けの小説ではなく、大人が大人に向けて書いた子供視点の小説は巷にありがちだが、その多くがあくまでも大人の目線で子供たちを描写しているためか、「子供とはこうあるべき」という押しつけに読んでいて幻滅することが多い。本書も子供達の性格付けを明確にするためか、それぞれ少しばかり類型的(活発だが実は色々問題を抱えている主人公、お調子者のデブキャラ、大人しく物知りだがちょっと神秘的な脇役など)になっているきらいがある。しかし子供どうしの中にも存在するドロドロした人間関係や、各登場人物の家庭の問題など、「子供だから」と単純にやり過ごすことのできない部分をしっかりと押さえつつ、彼らがそうした世の不条理らしきものとなんとか折り合いをつけて生きている姿がうまく描けており、凡百のジュヴナイル小説とは一線を画しているように思う。
ということで最初から最後まで楽しく読めたわけだが、ただ「夏休み」「小学校五年生」「謎の生物」「冒険」といういかにも少年アドベンチャー小説的なキーワードを勝手に第一印象として読み進めた割に、ラストのカタルシスが若干弱めのような気がしないでもない。もっとも本書のねらいは単なる冒険ものではなく、子供の目を通した自然への憧憬や深い考察がメインテーマであると解釈できるので、これはこれで良いのかもしれない。でもやっぱり、最後にはもうちょっとスカッとした何かが欲しかったような。
それにしても小学校五年生の夏休み、自分は何をしていただろうかねえ。と考えて今思い出したが、そういえばその夏は両親の田舎(九州・天草と鹿児島)にほぼ一夏中遊びに行っていたはずだ。地元のガキどもに混じって、海に山に、そして川に、さんざん遊び倒したあの夏。あの時、私は間違いなく「カワガキ」だったのだよなあ。
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