私を雇用する北京の会社の業務拡大に対応すべく新たな人材を募るため、今日行われた面接試験に私も出席した。面接というと、これまでは受ける方ばかりだったが、今回は初めて審査する方の立場。就職のための面接試験となれば、その人の人生をある程度左右する試練の時。他人の行く末を少なからず決定づけることになる場に身を置くとなれば、これはこれで緊張するものである。
募集する部門は経理から人事、生産管理、品質保証、そして開発要員まで。応募の段階で本当なら 20 人弱がやって来るはずだったが、当日来たのは全部で 13 人。来なかった連中は全員すっぽかしだそうである。日本の感覚でいくとキャンセルするならするで連絡ぐらい入れるのが最低限の礼儀というものだが、まあこういうところが大陸的おおらかさというかいい加減というか。ま、そんな連中は面接に来たところで合格するとは思えないが。
応募者の履歴書には事前に一通り目を通してあったが(もちろん中国語だ)、履歴書の内容でいかにも中国という感じで面白い項目がある。一つは民族の記入欄があること。同じ国に様々な民族が存在する中国ならではの項目で、実際今回も漢族、満族、回族、朝鮮族など、いろいろな民族の人がいる。それともう一つ興味深いのが「党派」という項。要するに政治的に加盟している党派は何かという欄だが、当然ながら圧倒的に多いのは「共産党員」。「無所属」という人もいるにはいるけれど、ほんの一人か二人ぐらいだ。単一民族の島国に長年住み、宗教と政治の話題はゆるやかにタブーなのが暗黙の了解という習慣が身に付いた人間にしてみると、ある意味これらもカルチャーショックである。
また応募してきた職歴のある人たちのほとんどが、前職は国営企業だったというのも特徴的だ。昨今の高度経済成長を受けて、外資系や中国国内資本の民営企業は軒並み右肩上がりだが、旧来の国営企業は一部を除いてどこもジリ貧状態だそうである。昔からの利権や慣習にとらわれすぎ、資本も経営も人事も何もかも国にがんじがらめに縛られて身動きが取れなくなった前時代的企業の末路は、リストラという名の解体作業が待ち受けるのみ。そのあおりを喰らった人たちが、新しい職場を求めて転職市場をさまよううちに、私を雇用する会社に応募してきたというわけだ。なんとも世知辛い話ではあるが、好景気に沸くその裏側で、こうしたことが実際にあるのも、これもまた今の中国の現実なのかもしれない。
肝心の面接は、一応は滞りなく終了。ただしたくさん集まった割にこちらの要求スキルに達している人が少ない。なんとか一人だけ経理担当で採用してもいいと思える人がいたが、それ以外は残念ながらほとんどが選考落ちである。個人的には期待していた開発要員も、一緒に仕事をするパートナーとしては今ひとつ力不足。履歴書には調子のいいスキルがたくさん書いてあるのに、実際に話を聞いてみるとなんだかあやふやだったり、ひどい場合には本当は全然携わったことがなかったりと、どうにも眉唾ものばかり。今、中国では、それなりのスキルと経験のあるエンジニアを探すのはかなり難しいとは聞いていたが、どうも本当のような気がしてきた。しかし新しい人が来れば少しは自分の仕事も楽になると思っていたけれど、なかなか思い通りにはいかないものだ。
どうあれ、次回に期待か。
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