昨年の暮れ、小惑星 2004 MN4 が 2029 年 4 月 13 日の金曜日に地球に衝突する確率が 1/300 というニュースが一般紙にも掲載されて話題になった。その後の観測と軌道計算により衝突の確率が刻々と変化し、一時は 1/37 まで上昇するなど、映画「アルマゲドン」を彷彿とさせる緊張が走ったことは記憶に新しい。
この小惑星の接近報道で一躍有名になったのが「トリノ・スケール」である。トリノ・スケールとは地球に衝突する可能性のある小惑星が発見された時の警告レベルのことで、「地球衝突の可能性が事実上ゼロ」である「0」から、「世界気象に壊滅的影響を与える」とされる「10」まで十段階のスケールで表される。この小惑星 2004 MN4 ではトリノ・スケール「4」が初めて使われ、一時は騒然となった。ちなみに「4」の記述は「広域災害をもたらす衝突の確率が 1% 以上の接近遭遇」。確かになんだかかなりヤバそうな感じがする。
そんな世間の騒ぎを聞きつけたのか、トリノ・スケールを掲載している本家の NASA のサイトではそれぞれスケールの説明に一文が追加されることになった。問題のレベル「4」については、「おそらく今後の望遠鏡による観測によってレベル 0 に変更される。接近まで 10 年以内の場合は一般の人々と官公庁も注目すべき」との文が加わることになり、必要以上に心配しなくてよいことがわかりやすくなった。2004 MN4 が衝突する可能性があるとされた 2029 年まで 20 年以上あるので、新しい説明文であれば一般の人々はとりあえず心配しなくてよいことがわかる。
なお、2004 MN4 が 2029 年に地球に衝突する可能性は既に否定されており、現在は 2034 年と 2035 年の接近がトリノ・スケール「1」に見積もられている。ちなみに現在確認されているトリノ・スケール「0」の小惑星は約 70 個、「1」の小惑星は 2004 MN4 を含めて 3 個あるが、トリノ・スケール「2」以上の小惑星は現在は無いそうな。ブルース・ウィリスがスペースシャトルに乗って核爆弾を仕掛けに行く必要は、今のところないということである。
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