夫婦してあまりエアコンの冷気が好きではない我が家では、一応一般家庭並にエアコンは設置されているものの、よほど暑くて我慢ならないとき以外は稼働することはほとんどない。幸い我が家はちょうど風の通り道になっているらしく、南北の窓を開ければマンションの前にある池で冷やされた空気が程良い程度に流れ込み、室内の気温はそれなりに過ごせる程度の温度に下がってくれるのだ。それでも異常な高温高湿度で、なおかつどうにも無風状態、という日はしかたなくエアコンのお世話になることもあるが、そんなことはおそらく一夏通しても数回程度だろう。
そんな我が家であるから、寝るときはエアコンつけっぱなしで、なんてことはまずほとんどない。ドライにすらもしない。こんな話を他人にすると「信じられない」とか「よくそんなので寝られるな」などと言われることもあるが、必要ないものは使うこともない。
そういう我が家のほぼ唯一の涼を呼ぶ文明の利器的電化マシンは、昔ながらの扇風機である。家の風通しがよいことは前述したが、流れ込んできた池からの冷風を扇風機で適当に攪拌してやれば十分に涼しくなるのだ。まあ確かにエアコンが涼しいのはそうなのだが、無理矢理気温を下げるのではなく、こうして自然な(と言っても人工的だが)風による冷却はなんとなく体に優しい気がする。エアコンに比べれば電気代も安いし室外機による排気熱もない。人に優しく地球に優しい。扇風機最高。扇風機ばんざい。
しかし悲しいかな扇風機はその仕様上、ごく狭い範囲にしか直接の冷風を送ることが出来ないという唯一にして最大の弱点をもっているのである。回転翼の水平ベクトル上に、翼の幅のみにもたらされるピンポイントな快適空間。いきおいその涼風を求めて扇風機の奪い合いになることもしばしばである。
その争いに終止符を打つべく、今年ついにもう一台の扇風機を導入したのだった。これでお互い邪魔されず、憧れの一人一台態勢。ついに実現マイ扇風機。投資金額数千円。なのに実現桃源郷。ああ生きてるって素晴らしい。
狭い部屋で扇風機が二発も動いてるのはちょっと変ですけどね。