「百器徒然袋 風」 京極夏彦 : 講談社ノベルス
「妖怪シリーズ」の番外編、というよりすでに独立した「榎木津シリーズ」と呼んだほうがより正確な、傍若無人、天衣無縫、眉目秀麗、理解不能な薔薇十字探偵・榎木津礼二郎を主人公にした第二弾短編集。第一弾の「百器徒然袋―雨」に引き続き、今回も三編を収録。
収められた三編どれもがそれなりにミステリ調なのだが、しかしそこは本編である「妖怪シリーズ」とはやはり趣が全く違う。当然ながら榎木津ワールド大炸裂で、最後には榎木津のハチャメチャパワーで全てが破壊されるといった案配。ただ今回は悪人がさほど悪でもないので大暴れのカタルシスが若干弱いし、京極堂も悪乗りし過ぎのような気がしないでもない。しかし怪盗にゃんこ仮面て。にゃんこ!!と叫ぶ三十路も半ばを過ぎた男はどうよ、という気はするが、でも榎木津ならすべてが許されるのである。そういえば今気がついたのだが、榎木津も京極堂もほぼ私と同い年なんですね。ううむ。
どうでもいいが、シリーズが進むに連れて、キャラの壊れ具合率が一番高いのは益田ではないか。たしか本編(妖怪シリーズ)で最初に登場した頃は、あんなヘタレ系キャラではなくてもっと毅然とした青年だったはずなのだが、すっかり「下僕」に染まってしまったということか。「あれに関わるとどんどん馬鹿になる」とは京極堂の談だが、違う意味で実践しているのが益田君かもしれない。
それにしてもこの人たちが映像化ねえ。と思いながら読むと、ちょっと不思議な感じがする。
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