11/24 に南極で見ることができた皆既日食で、NASA の地球観測衛星アクア(Aqua)による日食中に地球に落ちた月の影を捉えた画像が公開された。日食が始まって数分後(まだ皆既状態にはなっていない時)に 5 分間撮影されたものだそうだが、南極大陸に投影されたこの長い月の影は、その長さは 500km 以上にもわたるという。真っ白い大地に紡錘形に伸びた黒い影が印象的である。実際に宇宙からこの様子を眺めたら、さぞかし壮観でしょうなあ。
ちなみに皆既日食のあった 11/24 の夜、NHKでは「白い大地の黒い太陽」という南極からの生中継番組(日食の様子は録画)を放送していてちょっとだけ見たのだが、デジタルハイビジョンを駆使した大変綺麗な映像で日食の模様を堪能することができた。雪に覆われた白い地平線の近くに黒い太陽がぽっかりと浮かんでいる様子は、なにかこの世ならぬ光景のようで非常に幻想的。また皆既近くになってあたりが暗くなった時、それまでガーガー騒いでいたペンギンが急に静かになったことも興味深いシーンだった。ペンギンたちも何か異常な事態であることを感じていたのだろうか。単に鳥目で目が見えなくなっただけかもしれないが。
もっとも同番組で一番印象に残ったのは、司会の女性キャスター(住吉美紀という人らしい)のまるで一昔前の売れないアイドルのようなけったいな衣装だったりするわけだが(ネットでいろいろ探してみたけど、画像が見つけられなかったのが残念)。しかし、あれってまさか自前じゃないと思うがどうなのか。NHK のセンスにはしばし驚かされるのである。
ところで皆既日食は、地球のある地点から見た見かけ上、太陽が月によって完全に隠されることによって起こる現象である。地球から見た太陽と月の視直径とほとんど同じなのは、両者の直径の比がちょうど 400 倍で、かつ太陽のほうが月よりもおよそ 400 倍遠いところにあるからだ。だが現在たまたまそういう位置関係にあるだけであって、実は月は潮汐摩擦などの影響で一年に約 3cm ずつ地球から遠ざかっているそうだ。したがって、いずれは月の視直径が太陽のそれよりも小さくなり、地球上で皆既日食を観測することができなくなる日がいつかやって来るはずである。
ただしまったく観測できなくなるのはずいぶん先、おそらく何億年というスケールの後のことだろう。そのころの地球ははたしてどうなっているのか。今から何億年も先では地球の環境がどうなっているかさえも想像がつかないし、なにより日食を見上げるべき人類がその頃まで存在しているかどうかなぞ全くわからない。太陽と地球、それと月とが織りなす、永遠とも思える時間にくらべれば、人間の一生なんてまさに泡沫の夢、蜻蛉のごときである。まあ蜻蛉は蜻蛉なりにいろいろあるわけですが。
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。