今日はもう土曜日なので今さらこんなことを書くのも微妙に時期はずれのような気がするのだが、今週の木曜日はボージョレ・ヌーヴォーの解禁日。テレビや新聞に依るまでもなく、街の酒屋や最近ではコンビニの店頭でもボージョレ・ヌーヴォーが置かれているぐらいに、今やすっかり普通の年中行事として定着した感がある。
そうした世間の流行に疎いのはともかくとして、私もワイン好きのはしくれである。一応はボージョレ・ヌーヴォーも何度か飲んだことはある。しかし解禁日にまで飲んだ記憶はない。これは元来の天の邪鬼体質(お祭り嫌い)というのもあるが、だいたいにしてヌーヴォー自体がそれほど美味いもんじゃない、というのが大きな理由だ。
なにせ普通は 12 ヶ月から 18 ヶ月は樽でじっくり熟成させるところを、ほんのわずかな期間だけしか寝かせず、いきなり飲んでしまうのだ。軽くてサクサク飲めるのはいいとしても、渋みも酸味もコクも香りもごくわずかで、限りなくブドウジュースに近い代物になるのも仕方なしである。もちろんこれまで私が飲んだヌーヴォーなんて、そもそもが大したものではないのかもしれない。だが、正直言って美味いと思ったことがない。たしかバブル期なぞは、飛行機で日付変更線まで飛んで地球上で最初にヌーヴォーを飲むツアーなんていう、いかにもバブリーな企画があったと記憶しているが、なんでこんなもんにそこまでやるか、と心底バカにしたものだ。
だが今年はヨーロッパは猛烈な酷暑だったので、ぶどうが当たり年だったという。さらに収穫期に良い天候が続いたため、糖度が凝縮された素晴らしいぶどうだとのこと。聞けば百年に一度の出来だそうだ。話半分としても五十年に一度。十分の一でも十年に一度。本当だろうか。そんなぶどうで出来たワインなら、これは大変美味しいのではないか。そう思うと、とにかく早く飲んでみたい今飲みたいすぐ飲みたい。
ということで、解禁日初日の木曜日にボージョレ・ヌーヴォーを飲んでみた。場所は某所のワイン・バー。選んだのはマルセル・ラピエールのド・ラ・マドンヌ・ヴィラージュ。ボジョレー地区でも割と小さめの農家で作られたものらしい。さっそく飲んでみる。雰囲気はいかにもボージョレ風な、ベリー系の香りが強い。ブドウとバナナのミックスジュースみたいな香りもする。酸味や渋味は固めだけど少なめで当然ボディは軽いが、しかし輪郭のしっかりした味。糖度が高いためかアルコール分も多いらしく、ねっとりした甘みも感じる。なるほど、たしかに以前飲んだヌーヴォーよりは格段に美味しい。「百年に一度」かどうかはわからないが、少なくともここ五年ぐらいの中では一番美味しいような気がする。
という今年のボージョレ・ヌーヴォーであった。早飲みもののヌーヴォーでこれだけ美味ければ、来年、再来年に出てくるボージョレ・ヴィラージュやムーラン・ナヴァンは相当いいだろう。もちろんボージョレだけでなく、他の産地のワインも出来がいいはず。2003 年ものを飲めるのが、今から楽しみだ。
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