いよいよ小惑星探査機「はやぶさ」が地球に帰ってくる。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の Web サイト「帰還カウントダウン」の「地球帰還まで」という日にちも、ついに「0 日」になった。さまざまなトラブルに見舞われ、満身創痍となりながらも地球を目指している「はやぶさ」の、大気圏突入という最後のミッションがついに明日行われる。
「はやぶさ」はほぼ 7 年に及ぶ旅路で数々の偉業を成し遂げてきた。地球の重力を利用して軌道の方向や速度を変える地球スイングバイ、世界でも類のない新型イオンエンジンでの航行、地球から遠く 3 億 km離れた小惑星「イトカワ」へのタッチダウンと離陸、そしてその際に小惑星表面のサンプル採取にも成功しているかもしれない。日本の、というより世界の宇宙開発史に新たなページを書き加える素晴らしい成果である。
しかし同時に「はやぶさ」は多くのトラブルにも見舞われた。姿勢制御装置の故障、7 週間にも及ぶ通信の途絶、搭載しているイオンエンジン 4 基のうち 3 基が故障。しかしその度に JAXA プロジェクトチームの不撓不屈の働きによりなんとか切り抜け、そしていま正に地球に帰還するところまでこぎつけた。
しかし過去これほどまでに胸を熱くさせてくれる宇宙開発プロジェクトがあっただろうか。イオンエンジンによる航行や小惑星へのサンプル・アンド・リターンなど世界初となる数々の業績はもちろん、幾多のトラブルにより満身創痍になりながらもけなげに地球を目指す「はやぶさ」の姿に、単なる「小惑星探査機」を超えた何かを想ってしまうのは日本人の特質としてのものかもしれないが、絶望的な状況におかれてもけして諦めることなく「こんなこともあろうかと」という正にリアル真田志郎技師長ばりの「神運用」で数々の困難を切り抜けた JAXA プロジェクトチームに、技術屋の端くれとして心から賞賛と尊敬の念を送りたい。いやほんと、これら一大プロジェクトが日本の手により行われたということに、同じ日本人として心から誇りに思いますよ私は。
「はやぶさ」の 7 年にわたる旅路はついに明日の 22 時 51 分(日本時間)、地球大気圏への突入で終わる。小惑星のサンプルが入った(可能性のある)カプセルはオーストラリアの砂漠に落下するが、「はやぶさ」本体はその役目を終え、大気圏で燃え尽きるそうである。大気圏突入は南半球での出来事なので残念ながら見守ることは出来ないが、その時間、南の空を見上げてみるつもりだ。がんばれ「はやぶさ」。あともうほんの少しだ。
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