日本人三人が同時に受賞となった今年のノーベル賞。昨日のメダル受賞式の様子は、北京でも NHK のニュースで見ることが出来た。
おそらく日本でも話題になっていると思うが、そうそうたる今回の受賞者の中でもやはり特に目立つというかキャラが立っているのが益川敏英氏であろう。英語が苦手(というより嫌いらしい)を公言してはばからず、全ての論文を日本語で執筆するだけでなく(もちろん翻訳は誰かがやるだろうけど)海外の学会も代役を立てて一切参加しない、おかげで海外旅行は今回のノーベル賞授賞式出席が初という徹底ぶり。今般のノーベル賞だって、一般的に受賞者は授賞式の前に受賞した内容についてレクチャーをすることになっているそうだが、当然ながら普通は英語で行う。しかし益川先生、頑として英語を拒否、全編日本語で押し通したらしい。The Nobel Foundation に益川氏が講演したレクチャーがアップされているが、見てみると本当に日本語で話している。サイトにはわざわざ"The lecture was delivered in Japanese." と書いてあるし。いやもう、ここまでやってくれれば実に天晴れというか、ノーベル賞受賞者に対してこんなことを言うのは甚だ失礼ではあるけれど、正に絵に描いたような頑固じいさんである。ホントにこの先生、いいキャラしてます。
しかし今回の氏のレクチャーは、日本語という言語にとって、歴史的快挙であると思えるのである。なにしろノーベル賞の受賞講演だ。時代時代でフォーマットは変われど、おそらく半永久的に保存されることになるだろう。遠い将来、もしかしたら日本語は(さらに日本人も)すっかり廃れているかもしれないが、その時であっても日本語による今回のレクチャーが、人類の英知の歴史を物語る言語としてかつて確かに存在したという証明になるのではないか。
それはそれとして、またふと思うのは、所詮日本語なんて恐ろしくマイナーな言語だという事実である。益川氏はノーベル賞受賞という人類の英知に貢献した業績を上げたからこそ公の場で日本語を使うことを許されるのであって、逆に言えばノーベル賞級の事を成し遂げないと、世界は日本語になぞ耳を傾けてはくれない。日本人としていささか悔しく思うが、事実なんだから仕方がない。
まあ英語が苦手でノーベル賞も取れない私なぞは、せいぜいがアニメオタクの外国人に「俺はドラゴン・ボールの悟空や涼宮ハルヒがしゃべっている言語を母国語として使っておるのだどうだ凄いだろう」と威張るぐらいなものである。
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