欧米では最近、Wikipedia へのアクセスに対する規制の動きが見られるそうだが、ここの記事によると、ドイツのハードロックバンド SCORPIONS が 1976 年に発表したアルバム「Virgin Killer」のジャケットを巡って英国の Wikipedia が激しく揉めているとのこと。件のジャケットは SCORPIONS のオフィシャルサイト で見ることが出来る。
私がこのアルバムを初めて聴いたのはたしか高校一年の時だったと思う。当時はどちらかというと快活でカラッと乾いたアメリカンな重金属音楽を好んで聴いていた小僧にとって、絶望的なまでに暗く陰鬱なのにあまりにも美しいこの作品の素晴らしさは衝撃的であった。現在よりはるかに声量も表現力もあるクラウス・マイネの哀感溢れる歌唱と、天才ウリ・ロートの今で言う「ネオ・クラシカル」な流麗かつ劇的なギターワークがあまりにも美しい。特にストーレートなハードチューンなれど、正に狂気の名演と言うにふさわしいタイトル曲、破壊と絶望の究極的な美学の権化たるラストのバラッド「Yellow Raven」は、歴史に残る名曲と個人的には思っている。しかし作品としては素晴らしいとしても、まあたしかに妙なジャケットだなとは思ったものではある。
ともあれ、なにせ当時は全身からリビドーを垂れ流す高校生男子。ガキんちょの裸なぞよりも大人の裸の方に激しく興味がある年頃である。さすがにこのジャケットに劣情を催すことはなかったが、仲間内ではジャケットを虫眼鏡で拡大する輩もいたりして、見えたの見えないのとどうでもいいことが話題になったものだ。一応言っておくが、虫眼鏡を使ったのは私ではない。本当だ。
そんなことはともかくとして、なにしろこういう少女のヌード写真を使ったジャケットと背徳的なアルバムタイトルであったため、発売当初から物議をかもしヨーロッパでは発禁処分、その後メンバーの集合写真という何の変哲のないジャケットに差し替えられて流通したそうである。オリジナルジャケットで発禁を免れたのは、日本をはじめわずかな国のみだったとのこと。欧米では宗教的な倫理観が背景にあるのか、こうしたことについてはかなり厳格なのだろうが、八百万の神がおわす我が国は、そういう意味では寛容だったのだろう。しかし最近妙な事件が続いていることを鑑みると、日本でもオリジナルジャケットはけしからん、となる日が来るのかもしれない。しかし長いことこのアルバムを聴いてきたおっさんから言わせていただければ、「Virgin Killer」と言えばあのジャケットしかあり得ない。
どうでもいいが、この記事を書くにあたり google で「Virgin Killer」をキーワードにして検索してみると多数のページがヒットするが、中国からだとそれらのページに全くアクセスできない。まあヒットするのが SCORPIONS の話題以外ではほとんどが小児愛好系のエロサイト(だと思われる)なので、いわゆるところの「金の盾」によるブロックであろう。しかしそのとばっちりを受けてこのアルバムを論じるサイトもことごとく見ることが出来ないのは困る。もしかしたらうちのサイトも今回の記事でアク禁になったりして。
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。