チベットでの大規模な暴動が発生してから三日。様々な憶測や未確定情報が飛び交っているが、未だにその確定的な様子は全く分からない。それはひとえに中国が強力な情報統制をしいているからである。これまでに中国政府からの声明の他は、新華社通信による暴動の様子を撮影したいくつかのビデオが公開されているだけ。政府からの発表はともかく、新華社は中国共産党の機関誌なので、言ってみれば「大本営発表」である。大本営て、いやこんなことを書くと私の blog も公安に目をつけられるかもしれないからヤバイのだが、まあいいか。大本営大本営だーいーほーんーえーいー。
ともかく、今、我々が得られる情報は全て中国政府からのみのものである。なにせチベット自治区に対する外国からの査察はもちろん、外国人の流入を含め海外メディアの取材は全て拒否、電話も通じない状態だという。こんな一方的な状態で、ただ中国側から垂れ流される情報だけで何を判断せよと言うのか。
外向きはもちろんのこと、中国国内に対してもがっちり情報管制されている。新聞、テレビなどは先日閉幕した全人代(中国の国会)とオリンピックの話題ばかりで、チベット関連のニュースはほんのわずかしか報道されていない。流されている記事はたとえばこんな感じだ。
■ 拉萨打砸抢烧事件不是“和平示威”(北京青年報)
上記の内容は、産経新聞の福島記者の blog で翻訳されているのでリンクをはっておく。
会社で中国人同僚に話を聞いてみても、彼らが持ちうる情報はだいたい上記の新聞記事と変わらない。なにせ公にはこういう報道しかされず、ネットも例の「金の盾」によりチベット関連の情報は厳しく制限されている状況では仕方ないのかもしれない。もちろん世界中で発生しているチベット弾圧に対する抗議行動の様子や、下手をするとオリンピック参加をボイコットする動きがあることなぞ、全く知らない。彼らが知るのは「チベットで暴動が発生、家や商店が焼き討ち、略奪され、一般市民が何人も殺された。今は武装警察や公安が完全に鎮圧したので正常に戻った」ということだけである。そして恐らく今後も中国人民に対してこれ以上の情報が提供されることは無いだろう。
そういえば先の毒餃子事件も中国国内では結局は有耶無耶に、それも日本側に非があることを強く匂わせる形で終わってしまった。彼らの頭の隅に残るのは、餃子に農薬が混入されたのは日本側の問題であり、そして遙か遠くの山の中で起きた反乱分子による単なる暴動の顛末の記憶だけである。こうして歴史は作られる。ある意味、非常に貴重な事例を、それも内部からリアルタイムで体験しているのかもしれない。
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