今朝、会社までの道のりで、交通事故が発生しているのを見かけた。どうも交差点を右折しようとしたトラックが自転車を引っかけたらしい。幸い自転車に乗っていた人はたいした怪我もなかったようで、トラックの運転手らしきおっちゃんと元気に口論をしていた。交通ルールはあってもマナーは皆無な中国において、譲り合いも弱者優先という概念も何も無い。車も人も自転車も、右左前後左右とにかく己の行きたい方向に行きたいように走る。交差点や横断歩道では、一瞬でも早く鼻先を突っ込んだ奴の勝ち。これで事故が起きない方が不思議である。
さらに加えて中国では、前方の信号が赤でも右折(中国は右側通行である)はいつでもしていいことになっている。確かアメリカやその他の国の一部でもそうした方式を取っているところがあると思うが、それはそもそも交通ルールやマナーが確立されていればこそ有効な制度である。車は右折の手前できちんと減速する。歩行者や自転車は赤信号では道路を渡らない。こうした基本の基本も出来ておらず、道行く者ども全てが出鱈目に動いている状況では、まこと危険きわまりない。これこそ事故が起きるべくして起こる地帯。今朝の事故も、そうして起きたに違いない。
以前日本でも交差点でトラックが左折する際に歩行者や自転車を巻き込むという事故が頻発したが、最近はトラックに右左折を知らせる音声案内装置が取り付けられたことによって、この手の事故はかなり減少したと聞く。中国の歩行者や自転車が聞く耳を持っているかどうか甚だ疑問だが、こうした措置を取れば少しは事故も減るのではないか。
と、ここまで書いて唐突に思い出したのだが、ずいぶん前にこの音声装置がどこか壊れているトラックに出くわしたことがある。おそらく電気回路のどこかが不調だったと思うのだが、「ピーピーピー 左に曲がりま」「ピーピーピー 左に曲がりま」と語尾が微妙に切れているのであった。その声を聞いて、即座に「鶴光か!」と突っ込みを入れた私はオールナイト日本世代。もしやあのトラック、どこかのスイッチを押すと「わんばんこ」とか「ええか、ええか、ええのんか?」とか言ったのやもしれん。
あの鶴光トラックを目撃してからずいぶん日が経つ。今頃は中古でロシアか中東にでも売り飛ばされているのだろうか。極寒のシベリアもしくは灼熱の砂漠地帯あたりで、「左に曲がりま」と謎の日本語を発しつつ、今日も地域の交通安全に微力ながら一役買っているかと想像すると、なにやら心和む私である。
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