おそらく日本でもそれなりに報道されていると思うが、江蘇省南京市で H5N1 型、いわゆる鳥インフルエンザに罹患した患者が今月 2 日に死亡した。今回の発症例で危惧されているのは、人から人への感染が強く疑われる点である。
ところが中国衛生部はその可能性を否定する見解を発表した。
■<鳥インフルエンザ><続報>人から人には感染しない!感染家族2人の検査結果が判明―中国(Record China)
2007年12月10日、中国衛生部は定例記者会見の席上、今月初め江蘇省南京市で発生した鳥インフルエンザ患者から検出したウイルスは、人から人へ感染する生物学的基礎条件を具備していないと発表した。新華社が伝えた。衛生部スポークスマンの毛群安(マオ・チュンアン)氏は、今月3日と7日に相次いで同部が発表した鳥インフルエンザ感染者について説明。第1症例の男性患者はすでに死亡しているが、その父親である第2症例患者の症状は現在比較的安定しており、回復へ向かいつつあることを明らかにした。
第1症例患者の血液標本などを検査した結果、病原は家禽であることが再確認されたが変異などは見られないという。また、第1症例の濃厚接触者は 69人で、そのうち55人がすでに医学的観察不要と診断された。第2症例の濃厚接触者は20人でそのうち6人が両方の患者と接触があるにもかかわらず、これまでに異常は見られない。現在、患者2人への感染経路を調査中であるとのこと。
確かに中国衛生部の記者会見と質疑応答ではそう読める。
■2007年12月10日卫生部例行新闻发布会实录(中華人民共和国衛生部)
中国語でかつ長文なので引用は割愛するが、要するに、
・患者の体内から見つかった鳥インフルエンザウイルスは、人から人へ感染するタイプに変異してない
・どういう経路で感染したか不明、現在調査中
・まだ何人かは経過観察中
ということか。
しかし経験上、中国の公式発表ほどアテにならないものはない。この衛生部の発表の前にこんな報道もあった。
新華社通信によると、中国江蘇省の衛生当局は2日、同省の男性(24)が鳥インフルエンザウイルス(H5N1型)に感染して死亡したと発表した。男性はウイルスに感染した家禽(かきん)類との接触がなかったことから、同当局は人から人への感染の可能性がなかったかどうか調査に乗り出し、男性と接触した69人の検査を進めている。同当局によると、男性は11月24日に発熱や悪寒の症状が現れ、同27日に肺炎と診断されて入院。病状が悪化し12月2日に死亡、ウイルス感染が確認された。中国で鳥インフルエンザによる死者は17人となった。
この不幸にも死んでしまった男性が家禽との接触が無かったとすると、やはり人から人へ感染した可能性が高いと思われる。
南京は江蘇省の省都で、近年の経済発展に伴って建築ラッシュが続いている。それら建設現場で作業している人たちの多くは「民工」と呼ばれる農村部からの出稼ぎ農民である。農村部には当然ながら家禽類は普通にいるし、そこに住む人たちと濃厚に接触している。これら農村部は通常おそろしく貧しい。仮に飼っている鶏が病死したとしても、埋めたり焼却しないで捌いて売るか食べてしまうはずだ。そうした中で、もしかしたら中国のどこかの農村で、すでに人から人へ感染するタイプに変異した「新型インフルエンザ」が発生し、拡大中であるかもしれない。そしてそうした人たちが、仕事を求めて都市部へ移動、ウイルスをまき散らす。そして一気に爆発的な事態に陥ることは十分考えられる。もちろんこれは最悪のシナリオだが、はたしてどうか。
中国は来年の北京五輪を潰されないために、高病原性の鳥インフルエンザの流行に関しては、あらゆる情報統制を掛けてくる可能性は非常に高い。数年前の SARS の時は意図的に情報を隠蔽したことで世界中の非難を浴びたが、今度はなにせ文字通り国の威信を賭けたオリンピックである。そのためには新型鳥インフルエンザが発生しようが、おかげで人民が何人くたばろうが、都合の悪いことは隠してでも絶対に開催する。
まあこうして中国で暮らす我々に出来ることは、手洗い、うがいの基本セットぐらいなものか。いざとなったら日本に帰ればいいし。日本に入れてもらえない可能性は高いけど。
そういえば新年明け早々に南京に行かねばならない予定があったような気がする。話のネタに決死の覚悟で行ってみるか、はたまた大事を取って中止するか。いずれにせよ、日本から高性能マスクでも取り寄せますかね。
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