八月の下旬あたりからこちら、朝晩すっかり涼しくなった。週二回、仕事を終えた夜に中国語教室に通う時なぞ、午後六時頃に出かける際はまだそれほどではないが、授業を終えて帰路につく九時あたりになると、T シャツや薄い綿シャツではすでに肌寒さを感じる。日中はまだそれなりに暑いものの、空気から湿度が消え、実に爽やかな案配。ついこの間までの地獄のような蒸し暑さが嘘のようである。
天気予報によると今週末ごろから一気に秋の気配が進むそうだ。ちなみに今週金曜日の予報は最高気温 22℃、最低気温は 11℃ とのこと。体感的には日本の関東地方における十月ぐらいの気候だろうか。まあ当たらないことで有名な北京の天気予報の言うことなので、はたして本当にそこまで涼しくなるのか定かではないが、そこそこ涼しくなることは確かではあろう。
そういえば今年の夏、我が家では昼も夜もエアコンが常に全開稼働であった。猛烈な暑さと湿気に襲われる日中はもちろん、夜になってもその暑さがほとんど変わらないので、寝る時もエアコンをかけっぱなしにしないと暑くて寝られない。正にエアコン様々である。
しかし考えてみると、日本にいた頃はどんなに暑くても家でエアコンを稼働させることは滅多になかった。夏は暑いのが当たり前、暑い中を暑いままに生活するのが正しい夏の過ごし方。そもそもエアコンの冷気が気にくわない。暑いところを無理矢理冷やす、あの軟弱っぷりが性に合わない。そう信じて日本の酷暑を乗り切ってきたのである。それが北京に来たとたん、エアコン無しでは生きていけないわけである。エアコン最高。エアコン万歳。神様仏様エアコン稲荷大明神様。まあ確かに北京の夏は暑い。大変に暑い。しかしそれでも日本の夏と比較しても、特別死ぬほど暑いというわけでもない。なのにこの豹変ぶりはどうか。
現在暮らしている北京の住居は、家賃はともかくとして、ネット接続にジム費用、そして光熱費まで、生活にかかる費用は全て会社持ち。つまりは電気をどれだけ使おうが、己の財布は一向に減らないのであった(正確には一応上限はある)。するとどうなるか。電気使いたい放題>テレビ見放題>パソコン使いたい放題>冷蔵庫最冷デフォルト>ウォシュレット水圧最強デフォルト>エアコン?当然つけっぱなしでしょいつでも全開でしょ冷え冷えで涼しーでしょばんざーいばんざーいとなるわけである。誰がこのクソ暑い中を暑いままに生活なぞするか。どこぞの馬鹿者がエアコンの冷気が気にくわないなどとほざくか。だってタダで使えるんだもーん。お金かかんないんだもーん。
結局は懐具合だったわけである。つまるところは吝嗇だったということである。私の信念なぞエアコンの露ほどに脆く儚かったと気づく、北京の秋である。