聞くところによると今年の北京は比較的暖かい秋だったそうだ。十一月の初旬を過ぎると例年ならとっくに初霜が降りていてもおかしくないないそうだが、今年はまだまだその気配すら無かった。しかし先週末あたりから一気に冷気が訪れた。朝の最低気温は氷点下、日中でも 10℃ 行くか行かないかという案配だから、体感的には関東地方の真冬並みという感覚である。北京はユーラシア大陸の東岸から内陸にはいること約 100km。緯度的にも青森県の二戸市あたりに位置する。中緯度大陸性気候のご多分に漏れず、冬はとにかく厳しい。冬になると遠くモンゴルの山岳地帯から吹き下ろす風が市内を洗い、最低気温は氷点下 20℃ までにに達することもあるという。マジ寒いっす。
この厳しい寒さを乗り越えるために、北京には「暖気」という大変ありがたい暖房設備が市内のほぼ全ての建物に設置されている。これはいわゆるスチーム暖房のことで、熱水が部屋中を走り、真冬でも室内では薄着で過ごせるほど快適なものである。もちろん我が家にもこの「暖気」は設置されていて、各部屋はもちろん、トイレやバスルームまで、形や大きさは若干違えど、家の中の各所に写真に示したような白いスチーム装置が配備されている。
しかしこの「暖気」システムだが、実は全て国によって管理されているのだった。暖房が入る日も切れる日も国によって決められていて、また暖房代も 1 平方 m ごとにガッツリ決められ、建物の広さによってそれぞれ額が違うらしい(単位面積あたりの金額は毎年変わる)。まあ暖房費が徴収されるのはともかくとして、せめて暖房の入り切りぐらいはユーザに決めさせてくれても良いような気もするが、何事も一斉に初めて終わるというあたりがいかにも社会主義国家らしい方式ではある。寒かろうがなんだろうが例外は一切なし。しかしその日が来たら、今度は問答無用に使うべし。お上の言うことには(表面上は)絶対服従がこの国の掟である。国の定めには粛々と従うのが同志たる国民の勤めなのであった。私は同志じゃないですが。
そしてこの 11 月 15 日、北京市内で「暖気」の運用がついに開始されたのだった。いやっほー。待ってましたよこの日を俺は。これでこの寒さともオサラバよ。凍てつく街の様子を窓辺に見つつ、ぬくぬくホカホカの部屋でパンツいっちょになって、キンキンに冷えたビールなんか飲んじゃうぞこの野郎。よーし。さっそく「暖気」装置のバルブを全開、全開、ぜーんーかーいー。
……あのー、全然暖かくならないんですけども。
なんでも運用が開始されてもすぐにスチームが建物全戸に行き渡るわけではなく、数日しないと暖かくならないらしい。なんじゃそりゃ。てっきりバルブをひねればすぐにホカホカ天国がやって来ると思っていたのに。俺のこのパンツいっちょになった下半身をどうしてくれるのだ。
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