戦国自衛隊1549 福井 晴敏 寺田 克也 角川書店 2005-05-20 売り上げランキング : 122 おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
半村良原作、千葉真一主演による 1979 年のヒット作「戦国自衛隊」を、福井晴敏が 21 世紀版として書き下ろし。間もなく映画も封切られるそうで、自衛隊始まって以来の全面協力と 15 億円の製作費をかけたことで話題に。そういえばちょっと前に六本木ヒルズに本物の装甲車を並べたプロモーションもやってましたが。
まずは内容の前に本の体裁に驚かされる。やたら縦に幅広だなと思ったら、なんと横開きなのである。しかも中を開くと寺田克也の独特のタッチによるイラストが大量に盛り込まれていて、なんだかまるで絵本か映画のビジュアルブックのような作りなのには二度びっくり。始めに映画ありき、だからこうなったのかもしれないけれど、正直言って読みにくい。横開きで重量バランスが悪くて手が疲れるし、見開きでばばーんとイラストが出てくると、せっかく脳内にイメージしたビジュアルが壊されてしまうような。
内容的には、半村版の良さを上手く引き継いでいるという印象。半村良オリジナル版の小説ではあまり描かれていなかったアクションシーンも、こちらは福井節炸裂で派手にやっているし、オリジナルのメインアイデアであった「戦国時代に送り込まれた自衛隊が歴史に何をさせられるのか」という部分もほぼそのまま踏襲しており、大胆にプロットをいじりつつ、原作の持つ雰囲気を上手に消化している。
ただ福井晴敏の小説にしてはずいぶんコンパクトな中篇といった感じで、短いぶん、いつもの執拗なまでの書き込みが若干不足して、物語全体が薄っぺらになった気がしないでもない。もちろん福井晴敏独特の、作品の中で 描かれる熱すぎるほどの人物描写や台詞回しはそれなりに健在だが、その前後の書き込みが少ないためか、逆にそこだけ悪目立ちしてるようにも思える。一部の登場人物の行動も唐突に感じられる部分もあったし。映画化するのならこのくらいの長さがちょうどいいのかもしれないが、しかしまるで映画の脚本を読んでいるようで、福井作品としてはやはりもの足りなさを感じる。
ちなみに映画はたぶん見ないと思います。
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。