日本の歴史教科書問題や常任理事国入りをめぐり、ここのところ急激に高まった中国での反日運動。ついに先週末、首都・北京でも反日デモが行われた。半ば暴徒と化したデモ参加者によって日本大使館や日系企業の窓ガラスが割られ、日本食レストランのシャッターが壊され、道ばたの日本車がボコボコにされた。また上海では日本人留学生数名が暴行された。
新聞やテレビなどから繰り返し送られるこれらの報道を見ると、今や中国全土にわたって日本人や日本企業にとってはどこもかしこも相当危険、という感じがする。
だが私が赴任予定の現地の会社に勤務する人の話によると、北京市内のほとんどの場所では何も起こっていないそうである。デモのあった日曜日に市内のイトーヨーカドーにも行ってみたそうだが、普段と変わらず大勢の中国人で賑わっていて、日本製のビール、調味料、刺身などが普通に売られていたとのこと。また帰りにタクシーに乗って運転手と話してみたら(自分は日本人だと明かしたらしい)罵られて乗車拒否されるどころか「馬鹿なお祭り騒ぎで我々中国人も迷惑だ。お前ら在中日本人にも同情する」と逆に謝られたとか。「日本人と日本製品の優秀さは誰もが知っている。“日本製品不買”なんてあまりに馬鹿げている」とも。ごく一般の市民レベルではそんなもんなのかもしれない。
もっとも、もちろん中国国内でいわゆる「反日」の機運がこれまで以上に高まっているのは間違いなく、日本人や日本企業に対する直接的な危険性はこれまでになく高い。特に来月の五月は歴史的に見ても「反日」を象徴するような記念日が続くこともあり、今後ますますその危険性が高まる可能性は大きい。
それにしても思うのは、世の中、自分の頭で物事を考えないお目出度い人がたくさんいるということである。今のご時世、ネットを使えば様々な情報が簡単に手に入るわけだが、それら全てをそのまま盲信し、直情的に考えるなぞ愚の骨頂だ。バイアスのかかった報道記事や、得体の知れない誰かが垂れ流した書いてあることををただ信じるだけなら猿でもできる。こんなことは当たり前であるけれど、簡単に手にはいるからこそ与えられた情報をきちんと取捨選択し、正しく咀嚼する能力が今のネット時代には求められているわけである。まあそういう意味では今回の騒動はそれを試す試金石になるかもしれない。
しかし何も私が中国へ行こうかという時にこんなことにならんでも。これもまた巡り合わせではあるのだが。
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