世界ラリー選手権(WRC)の第 10 戦は、ラリー・ドイチュランド(SS23:409.66km)。ドイツのトリアー周辺で行われたこのイベントは、WRC に昇格して今年で三年目と、まだ新興のラリー。今期初めての本格的なターマック(舗装路)ラリーで、コース的には非常にコンパクトに構成されているが、WRC ラウンド中でも最長クラスの距離を誇る SS や、丘陵地を走り抜ける高速コース、ヘアピンが延々と続くテクニカルな低速コース、さらに軍事演習に用いられる不整コンクリートの荒れたコースと多彩なコース構成で知られる。今回はさらに初日晴れ&ウェット、二日目は激しい雨、さらに三日目には霧&一部ドライと、天候が変化しがちな WRC でも稀にみる過酷な条件となり、ドライバーは高度なドライビングテクニックを要求された。
で結果、ターマック・スペシャリストのセバスチャン・ローブ(シトロエン)が優勝。ローブはこれで今シーズン 5 勝目をマークし、ドライバーズ・ポイント 76pt とポイントリーダーとしての独走状態の地位を堅持した。ちなみにローブはこれでドイツ三連勝。コースが母国フランスのラリーと似ているから走りやすいのかもしれないが、それにしたってこの難しいラリーで三連勝は凄い。さすがターマックの申し子である。しかしドイツでローブが勝ったことで、これで今年のドライバーズ・ポイント争いの行方はローブが俄然優勢となった。なにせこれからの後半戦は得意のターマック・イベントが続き、一方で最近はグラベル(未舗装路)もめっきり速くなってきたし、さらに愛機クサラ WRCの速さと信頼性も折り紙付きとあれば、態勢としては盤石。現在の二位以下との得点差(約 30 ポイント)も考えると今年はこれでローブの優勝がほぼ決まりかも。
それにしても今回のドイツはリタイヤが多かった。ますはプジョーのマーカス・グロンホルムが SS1 でコースアウトしハブを壊し早々にリタイヤ。ついでスバルのペター・ソルベルグも SS11 でコースアウトしコンクリートブロックに激突する大クラッシュ。さらに今期これが最後の正式参戦となる三菱のジル・パニッツィは SS9 で電柱にヒットし、潰れたドアに左腕を挟みこむアクシデントであえなくリタイヤと、エース級のドライバーたちが軒並みクラッシュの憂き目にあってしまった。今回のドイツはウェット気味の悪天候でタイヤ選択が非常に難しく、選択のミスが即クラッシュにつながってしまったわけだが、それもこれもグラベル・ノートの禁止と、ステージ走行の 4 時間も前にタイヤを選択しなくてはならないという FIA によるサービス・ルールの変更が根本的な問題だろう。素人目に見ても、どう考えても危険すぎる。コスト削減も結構だけど、こうクラッシュばかり、しかも一歩間違えば命にもかかわる大クラッシュばかりが連発すると、FIA の所業は狂気の沙汰としか思えない。あのヘンリ・トイボネンの悲劇を、またくり返したいのかあんたらは。
さて来週の金曜日から始まる WRC 第十一戦は、いよいよラリー・ジャパンである。遂に WRC が日本に初上陸!やったーっ!!というわりには案の定というかなんというか、世間一般的には今一つ盛り上がりに欠ける気がしないでもないけれど、我々ラリー・マニアとしては長年の念願がようやく叶ったわけで、是非とも成功させてほしいイベントだ。残念ながら私は北の大地に行くことは出来ないので専らネット観戦ではあるが、WRC のモンスター・マシン達が日本の土の上を爆走する様をしかと見届けたい。
参考URL:
三菱 WRC
SUBARU MOTOR SPORTS
World Rally Championship Official
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