「プランク・ゼロ」 スティーヴン・バクスター:ハヤカワ文庫 SF
西暦 3,600 年代、人類は太陽系の開発を進め、ワームホール・テクノロジーによって他の恒星系に進出した。ワームホールのネットワークが太陽系全部を結びつけ、多種多様な生命との遭遇を繰り返していく。そしてさらに 1 万年後、二度の支配の時代を経て「ジーリー」につぐ種族となった人類を待っていたものは…。という SF 未来史連作集の第一巻。
収録されているのは、冥王星の外側のカイパー・ベルトの生物との遭遇を描いた「太陽人」、物理学者を死に至らしめた論理プール生命の怪異を描く「論理プール」、ワームホールの事故で冥王星から決死の帰還に挑む「グース・サマー」、水星の氷の下に生きる生物たちを描く「黄金の繊毛」、数百倍の速さで成長する少女の話「リゼール」など、異色の生命やテクノロジーを中心にしたアイデア重視のハード SF が並んでいる。基本的に各短編はとある時系列に沿った連作というかたちなのだが、それぞれ独立した一編として楽しめる。また各短編の間で時代の変化を語ることで、全体では壮大な未来史が浮かび上がってくる趣向だ。
ちなみにろくに調べもせずに面白そうだというだけで読んでしまったのだが、実は本書は続けて刊行された『真空ダイヤグラム』(ハヤカワ文庫SF)とセットで、著者の「ジーリー」シリーズの長編『天の筏』『時間的無限大』『フラックス』『虚空のリング』の間を埋める短編の連作集なのである。したがって本書はいわば「傍流」であって、本来なら「本流」の「ジーリー」シリーズ長編群を読んでからでないと、今ひとつ全貌を捉えることができないわけだ。そうだったのか。ということで若干順番は崩れてしまったが、さっそく長編シリーズの読破といってみたい。
しかし何とシリーズ長編ものは現在全て絶版中!げちょーん。
ううむ、これは困った。とりあえず連作集のセットの『真空ダイヤグラム』は読んでおくとして、長編のほうはどうしよう。地道に中古本でも探すかなあ。
コメント
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