「つる家」の料理人・澪とそのまわりの人々が織りなす、料理と人情の物語「みをつくし料理帖」シリーズの第七弾。試練の巻。
前巻のラストから、澪が思い悩む辛い展開になるのは予想はできた。夜空に浮かぶ心星を見つめる澪の心には、けして譲れないたどり着きたい道が、はっきりと見えていた。しかしそれを選択した途端、次々と降りかかる試練は、実に過酷で辛い。ああ、又さん。鯔背で粋で一途なあんたが、俺は好きだったよ。
と、本巻は内容は過酷だが、端々で登場する飯の数々は相変わらずどれも大変美味そう。「つる屋」は庶民向けの店なので、けして豪華でも高級でもないが、重湯も牡蠣も鯛の粗も、シンプルながらその美味さが伝わってくる。いやほんと、美味い飯を美味しく喰えるということは、それだけで生きる力でありますな。
それにしてもこんな店が近所にあったら絶対通うのに、と思う私だが、そもそも時は江戸時代。その願い叶うわけもなし。と思っていたら、なんとこのシリーズに登場した数々の料理の写真入りレシピと随筆をまとめた本が今年の五月に出るらしい。おおっ、ということは「梅土佐豆腐」や「里の白雪」、「忍び瓜」に「ふわり菊花雪」、そして「はてなの飯」を、実際に作って喰えるわけである。もっともレシピがあっても作る人間がただの素人なので、澪のような天才料理人の味を再現できるわけではないかもしれないが、それでもその一端は味わえるわけである。素晴らしいじゃありませんか。
諸々の都合上、続刊は一年後となるらしい。早く続きが読みたいマニアとしては身悶えする日々を過ごすわけなれど、とりあえずレシピ集でなんとか食いつないでいきますか。
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。