いよいよ開幕まで一ヶ月あまりとなった北京オリンピック。まあ中国にとって今年はいろいろなことが有りすぎた前半年だったが、今年最大のイベントは何と言ってもこれであろう。
若干旧聞に属するが、オリンピックおよびそれに続くパラリンピック期間前後の北京市内の交通規制が 6 月 19 日に正式に発表された。ずいぶん前から「近日中に正式発表」と言われていたのだが、イベント二ヶ月前に迫ってようやく発表というあたり、いかにも中国という感じではある。
で、その内容は以下だ。
■規制期間:7月20日(日)0時~9月20日(土)24時(パラリンピック終了後まで)
■北京市内の交通規制の内容:
偶数日はナンバープレートが偶数の車だけ通行可
奇数日はナンバープレートが奇数の車だけ通行可
■上記に加え、中国の政府関係機関は、さらに 70% の公用車の使用を削減する
■ただし以下の車両は規制対象から除外:
警察車両、救急車等、バス、タクシー(ただし借り上げハイヤーは規制対象となる)、オリンピック関係車両、大使館車など
■対象区域
7月20日(日)0時~8月27日(水)24時:北京市の行政区域全域
8月28日(木)0時~9月20日(土)24時:北京市の第5環状路より内側の市街地(第5環状路を含む)及び首都空港高速道路、八達嶺高速道路等
■上記のほか7月1日~9月20日の期間、北京ナンバーではないトラック等の車両(生鮮食料品を運ぶため等のために特別に許可された車を 除く)は北京市の行政区域全域に一切の進入を禁止、それ以外の排ガス規制合格証のない車も乗り入れ禁止
■北京ナンバーのトラックも、上記期間中は 6 時〜 24 時の間は六環以内の進入を禁止、0 時〜6 時は五環以内の進入を禁止
いやまあ、ある程度事前に予想はされていたとはいえ、こうしてみると規制内容は結構強烈である。
以前この blog にも書いたような気がするが、北京の公共交通はこれが本当に一国の首都とは到底思えないほどショボい。北京市の人口は公称 1,300 万人、なんだかんだ訳の分からない人間も含めると 約1,700万人が住んでいると言われる。北京といっても相当広いので、そのうち北京市街地に住んでいる人口は 1,000 万人ぐらいだろうか。現在、地下鉄の敷設をしゃかりきになってやっているが、まだまだ未開通の路線ばかりで、正直言って鉄道路は全然足りない。なのでバスやタクシー、さらには自家用車は北京では重要な交通手段である。今や自家用車は北京市民の重要な交通手段ではあるが、使えるのが一日おきとなると結構辛い。
タクシーはどうか。我々北京に暮らす外国人にとって、タクシーは日常の足がわりである。とりあえず交通規制期間中はタクシー自体は奇数・偶数番号制 限の対象にはならないが、普段自家用車や会社の車を使っている人の半分が一斉にタクシーを使うことになる。普段でも雨でも降ろうものならタクシーを捕まえるのが非常に難しくなるのに、それ以上の状況が二ヶ月間続くわけである。要するに外出するなということですか。
その上、オリンピック期間中は中国全土や外国からオリンピック競技を見に来る人々が多く訪れることになろう。元もと鉄道路が超貧弱なところである。地下鉄で行けない場所に自由に移動しようとすれば、いきおいタクシーに頼るしかないわけだが、争奪戦は熾烈を極めるに違いない。もちろんバスを使うという手もあるが、交通規制間中はバスも相当混みそうだ し、なにせ路線がかなり複雑なので、慣れない人にはなかなか難しいのではと思われる。
ということでなんだかんだで結構な交通規制になるのだが、私のような企業人にとって一番困るのが、何と言っても物流の問題である。特に私を雇用する北京の会社のように工場系の企業は影響は北京ナンバー以外のトラックが市内に入れないのもともかくとして、北京ナンバーであっても日中(朝の六時から深夜零時まで)は市街地内を走行することが出来ない。もしどうしてもということであれば夜中にトラックを走らせればなんとかなるが、実際問題としてそれもかなり難しいだろう。つまりはこの二ヶ月の間、まともにやろうとすると物を作ろうにも材料は届かなく、また作ったとしても出荷することが出来ない。あとはトラックではなく普通車に小分けして運ぶという手もあるけれど、少量ならいいとしてちょっと大物になったらそれも不可能である。どうしろと言うのか。
まあもちろん我々もこうなることを見越して先月まで前倒し体制でいろいろ事を運んでいたが、何か突発的な事態が発生したら正直言ってお手上げである。困ったもんだ。ちなみにこの大幅な交通規制により、当然ながらこうして多くの企業活動に大影響が出るわけだが、これまた当然ながら、それら損失に対する政府からの補償は一切ない。せめて法人税を少しまけてくれるとか、増値税の還付条件を緩和するとかやってくれてもよさそうなものだが、まあそんな気の利いたことをやるわけないですか、この国じゃ。
ただしこれら規制を正しく守った場合、7 月~9 月の三ヶ月分の車両船舶税と道路補修税が免税になる。これによる政府の減収は 13 億元(約 200 億円)とのこと。新聞などでは、規制期間は二ヶ月あるが実質的な規制は一ヶ月のみ(奇数・偶数規制なので、実質的に車を使えないのは一ヶ月だけ、という意味らしい)。なのに免税期間は三ヶ月もある。どうですか奥さん、こんなにお得ですぜ、と盛んに宣伝している。なんだか騙されているような気がするのは私だけですか。
ということで、これから始まる二ヶ月間は、北京の会社の多くは実質的に開店休業状態に追い込まれるような気がする。えー、日本の本社の皆様、そういうわけですので、今年の生産量、出荷終了、売り上げ・利益その他諸々が仮に落ち込んだとしても、それは全て全くもって全面的に全身全霊をかけてオリンピックのせいであります。そうなんです。そういうことなんです。そうに違いないのです。そういうことにしておいてほしいのであります。
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