大地震発生から四日後。今まで通信が絶たれていた地域からも続々と情報が入るにつれ、悲惨な被害状況はさらに増すばかり。今回の地震で被害を受けた面積は日本の国土の四分の一に相当、予想される死者は五万人以上、被害を受けた人の数は一千万人にものぼるという。スケールが違うと言えばそれまでだが、ここまで来るとすでに想像の域をはるかに超える。
地震による一次被害は、それはそれでとんでもないことになっているが、これから厳重な警戒が必要なのがダム決壊による二次災害である。四川省は山岳地帯であることから水が豊富で、水源地帯だからこそダムが多数ある。成都や重慶のような四川省の重要な重工業都市へ供給される電力の多くが、この地方の水力発電に頼っている。
しかし今回の地震により大規模な地滑りが各地で発生。大量の土石で川がせき止められ、いわゆる地震湖が多くできていると衛星写真は語っている。この地震湖はたまたまそこに水が溜まっただけの、実に不安定極まりない状態。現地ではいまだ相当大きな余震が続いているらしい。さらにこれから雨期に入る。不安定な地震湖の決壊は目に見えている。
また、四川省から流れる長江下流域には、あの三峡ダムがある。もし万が一、三峡ダムが決壊したら、下流の武漢や南京、上海などの大都市が壊滅するのは言うに及ばず、おそらく日本の九州沿岸にも津波が来る。
日本から援助金が送られたことや緊急援助隊の派遣が決まったことが大々的に報道されるにつれ、中国ではネットを中心に日本に対する感謝と尊敬、期待が高まっている。実際、私も会社の中国人スタッフから、「他国に先駆けて日本からの援助隊が一番早くやって来ると聞いてとても嬉しい。中国人として大変感謝するし、日系企業に勤めていることを誇りに思う」というような意味のことを言われた。まあ私が会社のエライ人なので、お世辞も多分に入っているとは思うが、ネットで中国ローカルの掲示板などを見てみると、そうした機運が高まっていることは確かだと思われる。
今、中国ではこうしたことの他に、一般市民による募金や献血が盛んに行われている。衛生上の不安はともかくとして、体から血を抜かれることを極端にいやがる(漢方上の解釈らしい)中国人が、朝五時からこぞって献血の列に並ぶ姿を見ると、今回の大地震が中国人の心に与えた衝撃の大きさを改めて思う。
しかし今後、ある程度時間が経ち、現場の状況が客観的に把握されてくると、今回の地震が単なる天災というだけでなく、実は人災の側面も大きかったのではないか、という論調が出てくるに違いない。日本でも報道されていると思うが、たくさんの子供や病人が生き埋めになった学校や病院の、煉瓦と貧弱な鉄骨で出来ただけのあまりにお粗末な建物、いわゆるところの「おから建築」は、ある意味崩れるして崩れたと言っても過言ではない。どこかの掲示板で「日本では地震のとき学校に避難するんだってよ」と、それとなく中国政府を批判する書き込みを見かけた。
今の一種の躁状態が収まって、そして表面化する政府批判。過去の例からすると、その怒りの矛先は、多分どこか別の方向に向けられる。それがどこなのか。あるいは無理矢理オリンピックで誤魔化すのか。
そういえば前回のエントリで書いた成都の代理店だが、今日ようやく連絡が付き、幸いにも人的被害は特になかったとのこと。とりあえず、良かった。
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