本日は南京へ日帰り出張。
北京から南京までは飛行機で約二時間の距離。広い中国からすれば、遠くまで行ってくるという感覚はあまりない。それでも飛行機に乗っているだけで四時間、その他の移動時間などを加味すれば、なんだかんだで結構な時間がかかる。朝一番の飛行機に乗って南京に到着した後、すかさず飛行場から移動。あれこれ仕事をこなして夕方遅くの便で北京に帰ってくるというスケジュールなのだが、移動に時間がかかるためにやはりやたらと慌ただしい。多少余裕を見るならば、前泊でもして朝からじっくり打ち合わせでも出来ればいいけれど、残念ながらそんな暇も無し。
朝七時半の飛行機に乗るべく、北京空港へ。朝一番だからか、空港内はかなりの人手である。かなり混雑したチェックインカウンタで搭乗手続きを済ませる。待ち行列に並んでいる間にも、後から後からどんどん人が並んでくる。そういえば中国の人は、とりあえず手持ちの荷物ほとんど全てを機内に持ち込む傾向がある。余計な荷物は預けて身軽になれば楽だと思うのだが、大きなスーツケースや段ボール箱でも何でも飛行機の中まで持って行く。どうしてなのか一度中国人同僚に聞いたことがあるが、飛行機が目的に到着した後、荷物を受け取るカウンタで荷物が出てくるのを待つのが嫌だからだという。確かに中国の空港では荷物が出てくるまで延々待たされることが良くある。それでも少し待てばやがては出てくるのだから、何も重い思いをして広い空港内を移動することはないと思う。だがそれより何より、ただひたすら待つという行為が耐えられないのである。
まあ確かに中国の空港のサービスの悪さや、待つことが嫌だという中国人気質も分からないでもない。しかし誰も彼もが巨大な荷物を持ち込むものだから、当然ながら機内の荷物入れは大変なことになる。大きな段ボールをいくつも抱えた行商風のおばちゃん。それは夜逃げか何かですか、と問いたくなるような山ほどのスーツーケースやらバッグやらを一家総出で運んでいく家族、何やら得体の知れない土産物の袋を両手に(時には首にも)下げた観光客、などなどが大挙して狭い飛行機に詰め込まれるのである。当然ながら頭上の荷物入れは常に満杯。少し搭乗が遅れると、荷物を入れるスペースを探して右往左往する羽目になる。しかし旅行会社のカウンタは出来るだけ荷物を預けるように指導していないのだろうか。面倒だからやらないのか、言っても誰も聞かないのか。
二時間あまりのフライト後、空港から南京市内へ移動して某社入り。さっそく打ち合わせを開始し、途中昼食を挟んで午後も飛行機の時間ぎりぎりまでひたすら会議。今回はこちらが持参した仕様書を元に細かい説明をするのが目的だったため、ほぼ一日中喋りっぱなしであった。さすがにのどが痛くなる。
若干時間が押したため、慌てて南京空港まで。チェックインやボディチェックを抜けて搭乗口にたどり着く頃には、搭乗時間まであと少しであった。やれやれ間に合ったと見回すと、何やら様子がおかしい。どうもまだ飛行機が着いていないようである。空港職員に聞いてみると、我々を乗せる飛行機は一度福州から南京まで来た後に北京へ飛ぶフライトスケジュールになっているという。しかし福州をたつ時にトラブルがあったらしく、南京到着が遅れているとのこと。今のところいつ南京に到着するのか分からないらしい。いつ着くのかなぞ、しかるべきどこかに問い合わせればすぐに分かりそうなものだが、それはともかくまたディレイかよ。今年の春、大連で体験した地獄の十二時間ディレイの恐怖が脳裏をよぎる。今日中に北京に帰れるのだろうか。
結局のところ、飛行機は無事に南京までやって来た。たったの二時間遅れである。いやいや良かった良かった。これで北京に帰れるじゃないか。
いやちょっと待て。飛行機が遅れているのである。それも二時間もである。怒ってもいいのではないか。文句の一つも吐いたって罰は当たらないのではないか。しかし私の気持ちは、怒りよりも安堵がはるかに勝っているのであった。二時間遅れたっていいじゃないか。無事に帰れればそれだけでめっけもの。
中国で暮らすようになって早二年。忍耐強くなったのか、単に麻痺しただけなのか。ともあれ、私の脳の中の一部分、それも何かとても大事なところが、少しずつ深紅色に染まりつつある。そんな思いのする夏の終わりである。
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