先週末は、私を雇用する北京の会社が年一回開催する会議が開かれた。
私を雇用する北京の会社は、いわゆるところのメーカである。日本国内および北京で開発された製品を北京の自社工場内で生産し、日本と全世界に輸出しつつ、さらに中国国内にも販売する業務を行っている。ここで、日本国内および世界への輸出は基本的に日本本社の営業部隊が統括管理しているのだが、中国国内販売については全て北京がヘッドクォータとして責任を負っている。
日本企業が中国で物品を販売する場合、やり方はいろいろある。しかし途轍もなく広い中国の国土をカバーし、販売子会社や支社、営業所を各地に作ってそこから直接ユーザに販売する「直販」方式は、規模も体力もある一部の会社に限られる。一般的なのは、土地土地の地元業者と契約して製品を卸し、そこからエンドユーザに販売してもらう「代理店販売」方式である。私を雇用する北京の会社も、この代理店販売方式をとっており、中国全土で約 50 社の地元業者と販売契約を結んでいる。
その代理店業者の代表者を一堂に集めて、昨年の実績やこれからの指針、新製品の情報提供、クレーム報告、その他諸々を話し合う年一回の会議が先週末の土日で行われた。一応エライ立場である私ももちろん出席し、さらには開発系のエライ人でもあるので、今年開発予定の新製品計画なぞをプレゼンしたのであった。代理店会議に出席する人はもちろんその代理店の代表者、社長格の人々であり、生き馬の目を抜く中国で自ら会社を興して商売をやっているような人物だけあって、ただでさえクセのある人の多い中国でもさらにクセとアクの強烈な人間であることが多い。またそうした多くの人たちと同じように、頭の回転も目の付け所も一味違うわけである。彼らの鋭い意見や突っ込みが乱れ飛び、会議は盛況で大変参考になりながらも、当事者としては冷や汗をかく場面が何度もあったのだった。
会議が終了したあとは、当然ながら大宴会に突入である。今回は主催者側の立場なので、参加者達に楽しく飲ませつつ、したがってこちらもそれ相応に飲まなければならない。そこで飲む酒はビールなぞという甘っちょろいものであるわけがなく、無色透明な蒸留酒、アルコール度 56% の悪魔、白酒(バイジョウ)である。乾杯に始まり、白酒の瓶を片手に次々と酌をしにやってくる参加者ご一行様。俺は静かにゆっくりとワインでも飲むのが好きなのよ。できればこんな酒、飲みたくない。しかし飲まないわけにはいかない。飲むしか道はない。ゴールは果てしなく遠いけれども、飲んで飲んで乾杯して乾杯する。それが私に科せられた義務である。胃が焼け肝臓が悲鳴を上げ脳が溶け、自分のゲップが白酒臭くて激しく萎えても、ひたすら飲むことが私の役目である。適当なところでお開きとなり、なんとか家に辿り着いたものの、当然ながら撃沈状態。
翌日の日曜日も朝一番から会議の続きであった。あれだけ飲んだわりに意外とダメージは少なかったような気もするが、さすがに胃がムカムカして気持ちが悪い。会場について席に座り、ミネラルウォーターをごくごく飲んでいると、参加者ご一行様が三々五々会場入りしてきた。昨晩宴会であれだけ飲んで、しかもその後ホテルの部屋に宴会で余った白酒を持ち込んでさらに飲んだという。なのに皆、二日酔いの気配も微塵も感じさせず、朝から元気いっぱいだ。中国の商売人はバケモノか。死んだ魚の目をしてぐったりしつつ、某アニメで池田秀一が吐いたセリフが頭をよぎる私であった。
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