夜空に青白く浮かぶ月は、古来から歌に詠まれ暦に用いられ、またうさぎや見目麗しい姫様が住む別世界として、人々に親しまれ、そして様々な想像をかき立てられる存在であった。
我々地球に住む者として身近な月であるが、未だに謎の多い天体である。そもそもその生い立ちからしてまだ良くわかっていない。地球と同時に生まれたとされる「兄弟説」、古代の地球に巨大な天体が衝突し、その衝撃で月が分離した「親子説」、たまたま飛来してきたところを地球の引力によってとらえられた「他人説」など、仮説はいろいろあるようだが、決定的な決め手には至っていないようである。
そんな月の様子を詳しく調査するため、2007 年夏、H‐II Aロケットに搭載され打ち上げられるのが月探査機「セレーネ」である。「セレーネ」は高度 100km の極周回円軌道を周回する主衛星(オービター)と 2 機の子衛星(リレー衛星・VRAD衛星)で構成されている。15 種類のミッション機器が搭載され、月全体にわたって元素分布や鉱物分布、地形や表層付近の地下構造、磁場やプラズマなどの環境を調べる。またリレー衛星に搭載された中継器は、地上局と主衛星との間の測距信号を中継し、世界で初めて月の裏側の重力場を計測する。さらにリレー衛星と VRAD 衛星に搭載された相対 VLBI 用電波源で、月全体の重力場を精密に計測するミッションもあるとのこと。このほか、高精細映像取得システム(ハイビジョンカメラ)で「地球の出」を撮影する予定だそうで、こちらも楽しみである。ちなみにセレーネとはギリシャ神話に出てくる月の女神の名。処女の誓いをたてた神で、銀の弓を持ち、太陽の男神アポロンの妹でもある。
この「セレーネ計画」を広く一般に知ってもらうと同時に、日本の宇宙科学や工学技術を理解してもらう目的で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の主催、日米の惑星協会の協力により「月に願いを!」キャンペーンが行われている。世界 149 ヵ国から寄せられた約 87万人の名前を小惑星イトカワに届けた探査機「はやぶさ」のキャンペーン「星の王子さまに会いに行きませんか」も同じ協力で実施されたが、今度はその「月」版というわけである。メッセージと応募者の名前はシートに印字されて探査機に搭載されるそうだ。実際の応募はこちらのサイトから出来るので、興味のある方は見てみるとよろしいかと。自分の名前とメッセージが夜空に浮かぶ月の周りをぐるぐる回っていると思うと、なかなか愉快じゃないですか。
名前だけじゃなく本当に月に行ってみたいものだけど、私が生きているうちに月旅行は実現するだろうか。
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