12 月も中旬になると、北京はもうすっかり本格的な冬景色である。空気が乾燥しているので雪はほとんど降らないものの、内陸の大陸性気候だからか気温はぐんぐんと下がる。ちなみに本日の最高気温は 3℃、最低気温は -5℃。昼間は表に出てもなんとか過ごせるものの、朝夕は冷気が頬を刺す。
しかしこれでもまだまだ序の口である。最も寒くなる 1 月の中旬から 2 月半ば頃になると、平気で -10℃ を下回る日もある。日本でも比較的温暖な関東南部地方に生まれ育った体にこの寒さはかなりこたえるが、これも海外で暮らす醍醐味の一つと思えばまた一興。寒くなったらなったで、北京名物の火鍋や羊のしゃぶしゃぶが美味い季節でもある。まあ食い物ぐらいしか楽しみはないとも言えるわけだが。
ここまで外気が寒くなると、道沿いのマンホールからホカホカと蒸気が立ち上ってくることもある。まるでニューヨークの街角のようななかなか情緒ある光景であるが、油断してはならないのは、ここが中国であるということである。
先日、昼休みに所用があって会社近くの銀行に寄った帰り道で、歩道のど真ん中からなにやら盛大に蒸気が吹き上がっている。何事かと近づいてみると、フタがポッカリと開いたままのマンホールであった。ボワボワと立ち上る蒸気の合間から穴のなかを覗いてみると、どうやら深さは 20m やそこらはありそうだ。しかしマンホールの周囲に転落防止のための囲いはない。工事をやっている様子もなし。危ない。非常に危険である。こんな深いマンホールに落ちてしまった日には、まず間違いなく大ケガ、下手すると命にかかわる事態になるやもしれん。
これに限らず、これまでにもフタが開けっ放しのマンホールを何度か目撃したことがある。繁華街や幹線道路近くの明るいところならまだしも、夜に街灯のない真っ暗な道で見たこともある。おそらくではあるが、これは誰かがイタズラでやったわけではなく、マンホールの中で工事か何かの作業をしていた人が、フタを開けたまま現場から離れてしまったものだと思える。もし日本で工事業者がこんなことをしたら大問題になるだろうが、北京でマンホールの開けっ放しが問題になったという話は、ついぞ聞いたことがない。もっとも仮に転落事故が起きたとしても、落ちた人間が勝手に落ちたのだからその人のミスであり、工事業者も当局も一切関知しない、とか言われそうな気がする。
日本人や外国人が一般的に考えて問題と思えることでも、中国人にとっては別に何でもないことは、この「マンホールの怪」だけでなく他にもたくさんある。なにせここは中国。日本人の常識に彼らが合わせてくれるわけがないのである。ボーっと道を歩くだけでも気をつけないと、思いも寄らぬ「落とし穴」にはまってしまうこともあるのだ。
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。