本日は天津まで日帰り出張。北京から天津までは直線距離にして約 120km。東京から富士山ぐらいの距離か。
北京-天津間は高速道路が通っており、普通に行けば車で約二時間の旅程。しかし今日は朝から深い霧が発生していて、途中で道路が閉鎖されてしまった。天津付近は霧がしょっちゅうかかるらしく、「天津の大霧」といえば有名らしい。しかしこれが普通の霧ならどうということはないが、なんでも近年の霧は大気汚染に関係があるらしく問題視されているそうである。そういわれてみれば、山の中で遭遇するようないわゆる「霧」然としたところはなく、なんとなく上空のスモッグが地上に降りてきたようなボンヤリした感じがする。
そういえば北京から天津にかけての高速道路沿いには大規模な経済開発区がいくつかあり、巨大な工場のあちこちに屹立した煙突から黙々と煙がたなびいている。どす黒い、いかにも体に悪そうな排煙を見ると、そりゃスモッグの一つや二つは発生してもおかしくはないと思える。これら空気の汚染に加えて、最近は工場から出る廃液や産業廃棄物による土壌、水の問題なども、すでにのっぴきならない状態にあると聞く。経済の爆発的な発展に伴うこうした負の側面は、どこの先進国も通った道ではある。特に日本はかつて深刻な公害問題と向き合い、克服してきた歴史がある。そこで培った技術は二十一世紀を生きる国にとって必須のものであり、翻ってそれを持たない国にとっては喉から手が出るほど欲しい財産である。急激に伸びる経済成長を維持しつつ、十三億の人民を養わなければならないこの国も、いま正に手に入れたい黄金であろう。このあたり、上手く使えば外交カードの切り札として取って置きの一手になると思うが、はたして安倍新内閣はどうか。
下道を通ってようやく天津に到着した。のは良かったが、今度は出張先の場所が良くわからない。同行した中国人スタッフは出張前に「一度行ったことがあるから没問題」とかほざいていたが、よくよく聴いてみると前回は高速道路を使って行ったので、下道から天津に入ってその先はよくわからないらしい。そういうことは早く言えと俺は言いたいが、しかも行けばなんとかなるさ、とばかりに地図すら持っていない。なんとも大陸的おおらかさというかいい加減というか行き当たりばったりというか。しかし今さらどうなるもんでもなし。出張先の担当者に電話して道を聞きつつ、道行く人に道を尋ね、ようやく目的地にたどり着く。結局なんだかんだで北京を出てから四時間かかった。仕事をする前からぐったり。
それにしても中国の道はわかりにくい。日本であれば道路の要所要所に行き先が書いてある青い看板があって、地図が無くともなんとかなる場合が多いが、そもそもそうした看板が中国にはほとんどない。運良くあってもなんとも要領を得ず、かえって混乱することもしばし。欧米と同じように道路の一つ一つに名前が付いているから、それを目安に走れということなのかもしれないが、それにしたって天津のような入り組んだ街並みは、道を知らない部外者にとってさっぱりわからない。もし安価なカーナビが出回れば、爆発的に普及するかも、とちょっと思ってみたり。
あれこれ打ち合わせをして天津を出たのは午後五時。幸い霧も晴れたようで、帰りは高速道路で帰京。それでもたっぷり二時間かかって七時に北京に到着。何年後かには北京-天津間に高速鉄道が通るそうだ。そうすればこうした苦労もせずに済むのかも。その時まだ私は中国にいるのかどうかはわからないが。
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