北京の夏の風物詩といえばいろいろあるが、やはりその筆頭は西瓜であろう。先月半ばから一気に暖かく、というよりも暑くなってきた北京では、街中、市場にスーパーなど、北京中の至るところで西瓜が売られている。あの独特の縞々模様を見るにつけ、ああ今年も夏が来たのだな、という思いにさせられるわけである。
北京の夏は厳しい。今の時分ではせいぜい 30℃ ちょっとを超えるぐらいで、まだまだなんとかやり過ごせる気温ではあるものの、これが夏本番になる七月、八月頃になると、ゆうに 40℃ オーバになることもまれではない。昨年あたりは高温だけでなく湿度も結構あって、おもてに立っているだけで体中の水分が流れ出ていくような、正に地獄のような暑さであった。
北京の人は西瓜が大好きである。夏になると、おやつ代わりに、そして食後のデザートに大量の西瓜を食べる。他にもたくさんの果物が出回っているけれど、やはり夏は西瓜らしい。中国の人は夏でも冷たい水をがぶ飲みする習慣はない。なんでも冷たい物を飲むと体の“気”が滞って良くないかららしい。だから未だにレストランで出てくるビールも生温かったりするわけだが、それはともかく、真夏の貴重な水分補給源として西瓜を食べるようである。また水分補給以外にも西瓜には利尿作用もあるという。西瓜を食べることで新鮮な水分を補給し、さらに体に溜まった余計な水分を排出して新陳代謝を良くさせる。夏の暑さで悪くなった体調や体のむくみを改善させるわけだ。これもまた中国四千年の生活の知恵の一つだろうか。
そんなわけで西瓜である。我が家でも先日、近所のスーパーで買って喰ってみた。まだ出始めで若干甘みが足りない気がするものの、良く身が締まっていてシャクシャクとした歯ごたえが美味しい。軽く塩をふって喰ってみると、控えめだった甘さも増して更に美味くなる。水分も豊富に含んでいて水水しい。確かに昼間の内に流れた水分やミネラル分の補完としては、これほど理にかなった果物もないと思える。
ちなみにこの大玉は、重量約 3kg。これで一玉 15 元なり。日本円にすると、今のレートでだいたい 200 円ちょいか。安くて美味くて、さらに体にも良い。北京の西瓜は、西瓜好きの日本人にとっても夏の必需品なのである。
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