■ 昨年の日本の違法コピー率は28%、損害額は約1800億円
BSA から毎年恒例の世界違法コピー率ベスト10国家およびワースト10国家が発表された。
同調査は BSA が世界的なハイテク調査会社であるIDCに委託したもので、これによると 2005 年の全世界の違法コピー率は 35%、同損害額は 340億(約3兆8000億円)ドルとなったとのこと。ただし、ロシア、インドなどの新興国および中央・東ヨーロッパ、中東、アフリカの数多くの市場で、違法コピー率の低下が明らかになっているらしい。
で、違法コピーと言えば中国、中国と言えば違法コピーと、この手の話題では中国をを抜きにして語れないわけである。実際、街の路上などでどう見ても違法コピーと思われるソフトウェアがとんでもない安値で売られているのを見かけることは多いし、「北京の秋葉原」に行けばパチモンのソフトが山と売られている。私が見かけた限りでも、たとえば Windows XP Proffecinal が 20 元(約 300 円)、Office スイートで 1 枚 15 元(約 220 円)ぐらいと、正規価格の 1/100 程度でワゴンに積まれている。そりゃこれだけ安ければ誰も正規版なぞ買わないだろう。実際、私を雇用する北京の会社でも、まあその、あまり大きな声では言えないが、業務で使っているオフィス系アプリのほとんど(というより全て)は違法コピーものである。
しかしこのレポートによれば、中国はロシア、インドなどと同様に違法コピー率は低下する傾向にあり、これまで上位の常連だったものが昨年は 4 ポイント下がってついにワースト 3 から脱却という結果になった。しかし下がったと言っても違法コピー率は 86% と未だ非常に高いことには変わりはない。これはつまり 100 本のソフトがあったら、そのうち 86 本はパチモンというわけだから、常識的に考えればとんでもない状況である。まあこの国の「常識」は、しばし我々日本人のそれとは根本から違うことがままあるわけだが。
ところで、その違法コピーソフトが動く PC は、中国の物価水準からするとけして安くはない。職種にもよるが、北京では大学卒の初任給がだいたい 2,000~3,000 元(約 3~4.5 万円)と言われている。対して PC の値段はベーシックスペックのデスクトップマシンでも 5,000~10,000 元。一般的な勤め人の感覚からすると、PC は途方もなく高い。違法コピーソフトは猛烈に安い代わりに、そのソフトを使うために必要なPCは、下手すると給料数カ月分もの価格になる。しかし(都市部に限れば)一般家庭の PC 普及率は割合高く、普通の勤め人であればたいてい家に PC があるようだ。
こんな割高で生活必需品とは言えないものなのに、なぜ中国人が高価なPCを購入するのか。それは海賊版屋の店頭に並ぶソフトの品揃えを見ればなんとなくわかってくる。そのラインアップとは、日本、韓国、アメリカなど輸入物のゲームソフトに mp3 のデータ集、そして DVD-Video の数々である。PC を使ってゲームをし、音楽を聴き、DVD を見る。日本でもごく一般的に見られる PC の利用方法である。しかし大きな違いは、そのソフトが格安の海賊版であるということだ。
中国政府は数年前から海賊版、違法コピーソフトの撲滅のためのキャンペーンをはり、パチ物の一掃に躍起になっている。しかしその効果は未だあらわれていないようだ。そりゃ正規の値段の数分の一から百分の一の値段で買えるソフトがいくらでも売っているのだから、誰も好きこのんで高い金を出して正規版を買うわけがない。それにこの国の一般的な物価水準を考えると、下手すると月給分にも相当するような高い正規版ソフトをホイホイと買える道理もない。ソフトが動く PC はなんとか買ったとしても、ソフトまで回す金があるとはとても思えない。ここまで違法コピーに頼りすぎた社会は、正規版を普及させることなぞもはや不可能、ともいえる状態になっている気がする。
これが仮に政府が強権を発動して海賊版を完全に市場から締め出したとしたら、いったいどうなるか。倒産する企業が続出するのかもしれないし、物価が急上昇するのかもしれない。しかしアメリカをはじめ、諸外国の圧力は日に日に増すばかり。違法コピー天国のこの国は、この先いったいどこに進んでいくのか。海賊版のオフィスアプリで仕事をしつつ、つらつら考える私である。
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