今やすっかりおなじみとなった、米 YouTube が運営する動画共有サイト「YouTube」。YouTube はユーザがアップロードした動画を Flash 形式で公開できるサイトで、公開されている動画はホームビデオから音楽プロモーションビデオやテレビ番組、アニメなど、アマチュアから市販のプロの作品まで、あらゆる動画コンテンツが存在する。アマチュアのビデオはともかくとして、どう考えても著作者に無断でアップロードされたとみられるコンテンツも非常に多く、著作権的にはかなり微妙なサイトではある。しかし大昔のテレビ番組やバンドのライブ映像など、誰が持っていたのか知らないが貴重な動画もたくさんあり、利用するだけなら大変ありがたいのもまた事実である。
基本的にサイトは全て英語で運営されているが、動画ファイルはキーワード検索でき、日本語による検索も可能。このあたりが日本人利用者に対する敷居を下げているようで、人気歌手やバンド名で検索すれば、テレビ出演時の映像やプロモーションビデオが続々とヒットする。人気アニメシリーズが全話アップロードされていることもある。
で、私も時々好きなバンドのプロモビデオや昔見たテレビ番組、WRC の動画などをつらつらと検索して和んでいるわけだが、先日知人より面白い動画があると教えてもらったのが、これ。
■YouTube - Focus - Hocus Pocus
FOCUS はオランダが生んだ知る人ぞ知る伝説のバンドである。ジャズやクラシックの要素を取り入れた超絶技巧のインストゥルメンタル曲を中心として、1970 年代に主にヨーロッパでカルトな人気を誇った。特に中心人物であるギタリストの Jan Akkerman(ヤン・アッカーマン)のプレイは当時としては非常に革新的で、Yngwie J. Malmsteen や Paul Gilbert、Steve Vai ら、80 年代以降のスーパー・ギタリスト達がこぞって世に送り出したスウィープ奏法などのテクニックを、すでに 70 年代前半から披露していた。もちろんテクニックだけではなく、メロウで表情豊かな歌心のあるプレイも素晴らしく、私のフェイバリット・ギタリストの一人である。
FOCUS には多くの名曲があるが、この 1970 年のアルバム「Moving Waves」に収録された「Hocus Pocus(邦題・悪魔の呪文)」があまりにも有名。金属質なハードロックとクラシカルバロックが渾然一体となって解け合ったところにフリージャズのエッセンスをふりかけ、さらにキーボードとフルート担当タイス・ヴァン・レアの奇っ怪かつエキセントリックなヨーデルフレーズが絡まる、正に「悪魔の呪文」のような壮絶な曲である。ちなみにこの映像の元ネタはどうやらアメリカかイギリスのテレビ番組でのライブの模様のようで、それを NHK のBS で放送した時のコンテンツらしい。日本語の字幕が入るのがちょっと邪魔くさいが、FOCUS の悪魔のような神がかったような強烈なパフォーマンスの前ではどうでもいいことである。
この曲を初めて聴いたのはたしか中学三年生の時だったと思う。正に衝撃だった。世の中にこんな(妙ちくりんな)音楽があるとは。以来すっかり虜になり、中学、高校時代は彼らの音楽を貪るように聴いたものだ。こんな音楽ばかり聴いていたから今のねじ曲がった性格になってしまったかどうかは定かではないが、ともあれ私の人生の中で多大な影響を受けたバンドの一つであることは間違いない。そういえば持っている FOCUS の音源は全部レコードとカセットだったか。CD を買い直して久々に聴いてみますかね。
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