今月に入って若干肌寒い日々が続くものの、確実に日々暖かくなる北京の春。その春の訪れと共に北京の街に襲来したもの、それは黄砂である。内モンゴル自治区西部とモンゴル国の国境付近の砂漠に起源を持つ小悪魔たちは、遙かシベリアから吹く北西からの風に乗り、ジェット気流の流れる先遙か数千 km の旅路の途中で、行く街々に黄色い痕跡を残していくのである。まあ要するにだ、すげー埃で大迷惑っつうことだ。
で、ついに今年も大規模な黄砂がやって来たのだった。どうやら 17 日未明に大量に降りそそいだらしく、前日まではそれほどでもなかったのに一晩明けたら街中が真っ黄色。道路も建物もうっすら黄色く染まり、空も茶色と灰色が混ざったようにどんよりしている。いやー、こりゃすげえ。なんて呑気な感想を述べている場合ではなく、なんでも今回の黄砂は 2003 年以来最大規模のもので、その影響は北京市、山西省北部、河北省の大部分、天津市など、地域の面積は 30 万 4,000 平方 kmに及ぶと見られていらしい。北京市気象局の観測では、北京市に降っただけでも 1 平方 m 当たり 20g、総量にして 30 万 t というとんでもないもの。4t トラック八万台分の砂が一斉にブチまかれたんだから、そりゃこうなるのも当然か。
ここまで酷いと市民生活に与える影響は相当なもので、小学校では朝礼や国旗掲揚を教室内で行ったほか、病院では喘息・鼻炎の患者が殺到、また結膜炎の患者も増えているそうな。さすがに北京市当局からもなるべく外出しない旨のお達しが出た。言われなくてもこんなに埃っぽいと外出する気にもなれまへん。実際少し表を歩いただけで髪の毛はジャリジャリするし、喉もいがらっぽくなる。北京市は対策として散水車を出動させ、埃排除にやっきになっている。しかし散水車がこない場所では清掃員が人海戦術で闇雲に箒で掃除するものだから、積もった砂を再度巻き上げてくれるのでたまったものではない。せめて水をまいてから掃けと俺は言いたい。
それにしてもここまでくると外出するにはマスクは必携だが、なんでも黄砂の砂粒はスギ花粉よりも小さいらしく、普通のマスクでは素通りしてしまうらしい。しかも砂粒の表面には空気中に漂っている窒素酸化物などの有害物質が付着しているとのこと。ただでさえ埃っぽくてイガイガするのに、さらに公害物質が肺を直撃するダブルパンチ。ううむ、なんだか凄くヤバそうな予感。SARS の時に出回った目の細かいマスクってどこかに売ってないものか。
このままあと五十年もすると、北京は砂に埋もれ砂漠に取り込まれるという研究もあるらしい。実際、一昔前までは砂漠化する前に北京を捨てて遷都する案も出ていたとか。中国政府は北京市郊外に防砂林を植えたり、内モンゴルなど砂漠地帯の緑化を進めるなど対策にやっきになっているそうだが、まだまだその効果が表れるにはほど遠い、というより正に焼け石に水状態なのが現状である。はたしてこの先どうなるのか。その前に人民の喉と肺に大量に混入した砂を洗い流す方法を開発して欲しいけれど。
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