このサイトを長年ご覧いただいているごく少数の賢明な(かつ奇特な)読者の方ならすでにご存じだと思うが、WRC とは世界ラリー選手権のことである。WRC は FIA(国際自動車連盟)が公認する四輪モータースポーツの世界選手権の一つで(もう一つは F1)、市販車をベースに製作した競技車両を使用し、公道でタイムを競う。
同じコースをグルグルまわるサーキットレースと違い、公道を走る WRC のコースは実に多彩である。氷点下 20℃ の雪と氷に覆われた極寒のスウェーデン、岩と砂にまみれた灼熱の地中海沿岸を行くアクロポリス、天高くそびえる山々を標高 3,000m 近くまで駆け上がるアルゼンチン、「魔女の回廊」と呼ばれる数千にも続く細くツイスティな山岳路を走るコルシカ。それら一般道を 4WD とターボチャージャーで武装した 300 馬力のモンスターマシンが、「公道最速」の称号を賭けてコンマ 1 秒のタイムを競いあう、車好きならずとも正に血湧き肉躍るエキサイティングなモータースポーツなのである。
現在 WRC はヨーロッパ、南北アメリカ大陸、オーストラリア、ニュージーランド、そして日本において年間で全十六戦行われており、その WRC サーカスのテレビ放送を全世界中で毎年延べ数億人が視聴しているという。特にヨーロッパでは地域によっては F1 やサッカー以上に人気のある競技で、世界チャンピオンの座に着くような伝説的な WRC ドライバー達は、祖国の英雄として全国民的な認知度を誇るという。
そんな世界的な人気を誇る WRC であるが、なぜか日本ではほとんど人気がない。いや、人気がないという以前に、そもそも WRC 自体をほとんど知られていないのが現状であろう。一昨年からラリー・ジャパンが開催されるようになり、さらに PCWRC クラスでは新井敏弘が昨年(2005 年)のワールドチャンピオンを獲得したり、さらに今年(2006年)のモンテカルロでは同クラスで奴田原文雄がクラス優勝してするなど(F1 なぞよりもよっぽど)日本人ドライバーや日本自動車メーカ系ワークスが大活躍しているのに。なのに何故か、ここ日本ではそれらの活躍がほとんど報道されることがない。せいぜいが新聞のスポーツ欄のほんの片隅に小さく記事が載る程度である。メディアにのらないから知られることがない。知られることがないから人気が出ない。こんなにも過激でエキサイティングなモータースポーツなのに、これではあまりにもったいないではないか。
だがラリー・ジャパンが開催されるようになってから、状況は少しずつであるが変わりつつあった。テレビ東京では WRC イベントがある毎に速報番組が組まれるようになり、BS 日テレでは毎週レギュラー放送もされている。またスカパー!やケーブルテレビを通して Sports-i の WRC 公認放送を視聴することも出来るようになった。しかし残念ながらテレビ東京の番組はスポンサーであった三菱の WRC 撤退を受け、今年から番組自体がなくなってしまったし、BS 日テレや Sports-i も受信方法の点から言うと一般的とは言い難い。
しかし我々にはもう一つ素晴らしい方法があるではないか。ネットである。ネット放送である。前々から局所的に噂にはのぼっていたが、USEN の無料のブロードバンド放送局 GyaO で、2006 年 WRC(世界ラリー選手権)の全戦放送がついに開始されたのである。これでネットに接続する環境さえあれば、いつでもどこでも誰にでも WRC の魅力を感じてもらえることが出来るわけである。
それになにより、海外にいる身にとって、こうしたサービスが始まることは大変ありがたい。日本に住んでいた頃はケーブルテレビで Sports-i を見ていたのだが、当然ながら今は見ることが出来ない。それが若干短めながらもこうしてネットで視聴可能になったのである。素晴らしい。素晴らしすぎる。いやほんと、待ってましたよ私は。
なにはともあれ、まずは早速見てみたい。サイト上には今年第一戦のモンテカルロの模様が視聴可能になっている。マーカス・グロンホルムが新型フォード・フォーカス WRC を駆り、見事優勝に輝いた一戦である。サイトのリンクを辿って簡単な視聴者登録をすませた後、わくわくしながらプレイボタンをクリック。
ん?なんか出てきた。
何だって?
って、おい。
なんじゃそりゃあああっ。
日本に在住の皆様、WRC の魅力を心ゆくまで嫌と言うほどご堪能下さい。俺の分も俺の分も俺の分も。
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